マグマとマグマ溜まり
溶岩・マグマの温度 |
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Question #339
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Q |
薪窯焚きで中の火を見ていると、足元の奥深くで燃えているマグマを思いドキドキします。
炎の色は温度の目安になりますが、1300度では白くなり、炎と言うより光という感じです。
地球の中心の温度は6000度と言われていますが、太陽のように白く輝いているんでしょうか?!
(12/03/99)
maguma:陶彫作家:33
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A |
こんにちは。私もマグマが大好きです。
地球中心の温度は、プラスマイナス1000度程度の不確定性はありますが
およそ6000度、太陽の表面温度と同じ程度です。だから、もし地球を
2つに割って中を見ることができれば、中心部はご想像のように
太陽と同様にまぶしく輝いて見えると思います。ただ、色の知覚というのは
多分に人間的な要素(網膜の視細胞と脳)に影響されますから、
「白」という色表現が適当かどうかはわかりません。
人間の目には色を感じる3種類の細胞がありそれぞれ赤〜黄色、黄色〜緑、
青〜紫の光の波長を中心に敏感になっています。
窯の中などにおかれた高温の物体は、その熱エネルギーを光として放出します。
この光は連続スペクトルですから赤く見える光も緑色の光も青く見える光も
その中に含まれています。温度によって色が変わって見えるのは、放出される
光の波長ごとの強度が変化するためです。例えば、人間の目が赤〜黄色と
感じる波長域の放射量と青〜紫色と感じる波長域の放射量とを比較すると、
1000度Cの時には赤〜黄の光は青〜紫の光の80倍も放射されていますが、
1300度Cになると青〜紫の光の割合がやや強まって30倍程度になってしまいます。
6000度Cでは逆に10%程度青〜紫色の光のほうが多く放射されるようになります。
放射光自体の強さでみると、どの波長についても温度が上がるにしたがって
放射光量は増加します。1000度Cの時と比較した場合、1300度Cの時には
赤〜黄色の光は50倍、青〜紫の光は130倍も放出されます。6000度Cの時には、
赤〜黄色の光はなんと数百万倍、青〜紫の光は数億倍もの放射があり、
とてもまぶしいだろうと思います。
蛇足ですが、火山の分野でも放射の情報を使って溶岩などの温度測定が
行われています。この場合は、上のような放射光の温度依存性を用いて、
異なる波長に敏感な複数のセンサーの受光量の比や受光強度から温度を
求めています。人間の目と同じなんですね。
(12/4/99)
安田 敦(東京大学・地震研究所)
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Question #188
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Q |
現在、産業廃棄物の処理を巡ってさまざまな問題が取りざたされております。
その一つが、焼却処理をした場合に発生するダイオキシンの問題です。
これは焼却時の温度が1200℃以上だと問題ないそうですが、この温度を保つのは
難しいみたいです。
そこで、いきなり突拍子もない質問になるのですが、火山の火口に産業廃棄物を
ほうり込めば、問題ないと思うのですが如何なものでしょうか?
ただし、火山の立地条件としては無人島みたいなところで火口までブツを運べる
ことが条件になりますが。
商業ベースでペイするとは思えないのであくまで個人的な興味からなんですけど。
(1/31/99)
Nick:商社勤務:29
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A |
【溶岩と火口】
溶岩の温度は普通900度から1100度くらいです.溶岩の組成によっては,1200度を越
えるものも存在するかもしれません.ですが,これはあくまで噴火中,もしくは噴出
直後の溶岩の温度でして,実際の火山の火口の中で,このような高温の溶岩がドロド
ロと溜まっている状況はほとんど存在しません.あるとしたら,せいぜいハワイくら
いでしょうか.他の火山の火口は,噴火中で近づけないか,表面が冷えているか,あ
るいは噴出物で閉ざされているはずです.
【放り込む?】
また,化学的なことを考えても,溶岩の組成は単純ではありません.しかも,その組
成は火山により,また同じ火山でも時期により変化します.起こりうる反応をすべて
予測することは簡単ではないでしょう.ご質問のケースでは,高温を得るということ
だけで解決を図るのは,やはり単純すぎると思います.自然は複雑でパワフルですか
ら,思っても見なかった結果が返ってくるかもしれません.私たちは,こういう例を
多く経験しているはずです.「問題ない」はずはありません.
【火山を制御】
少しはずれますが,個人的には,火山という自然をゴミ処理に利用する発想には,強
く抵抗を感じます.私たちが火山から恩恵を受けることはいいと思いますが,まだま
だコントロールできる対象ではありません.例えば,溶岩流については,流れを先端
を止めたり,流路の一部を変えようという試みはなされていますが,実際には「ビル
を倒して流れを変えたりできる」のは映画の中だけです.宮沢賢治の「グスコーブド
リの伝記」にあるように噴火を制御することは,今日でもまだ夢のような話なのです.
(2/3/99)
西村裕一(北海道大学・地震火山研究観測センター)
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Question #2140
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Q |
こんにちは。熊本県の乙女小学校の5年生です。
今、僕は火山の中に石を入れても、その石は溶けないというテレビを見て本当かなと思いました。
だから学校のパソコンでの調べ学習で、そのことについて調べようと思いましたが、なかなか見つかりませんでした。
そしたら、このホームページが見つかったので、質問しようと思って、メールを書きます。
教えてください。本当に火山の溶岩の中に入れても石は溶けないんですか?
何でなのかも教えてください。
(02/08/02)
マッキーとおしょう:小学5年生:11
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A |
地表で見ることができる様々な石は温度と上げていくとどろどろに融けてしまいます.
でも,実は石の種類(化学組成)によってとける温度が大きく違います.
1000度以下で簡単にとけてしまう石から,1500度まで上げてもとけない石まで様々です.
溶岩は岩石がとけた状態のものですから,火山の溶岩の温度もまた溶岩の種類によって様々で,
例えばハワイのキラウエア火山の玄武岩質溶岩のように1200度近い温度のものもあれば,
昭和新山のデイサイト質溶岩のように900度から1000度程度のものもあります.
だから,火山の中に石を入れてもその石は溶けない,と断定することはできません.
どんな石をどんな溶岩に入れるかで,とけることもあればとけないこともあります.
(2/11/2002)
安田 敦 (東京大学・地震研究所)
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Question #5460
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Q |
質問をさせていただきます。現代の技術で岩を溶かす温度を作ることができるのでしょうか?
もし、できたとして、溶岩を入れる器はあるのでしょうか?焚き火をした程度でも近寄れない熱さを感じますが、6000度という、とてつもない温度では、周りの影響もすごいことになるのではと思います。マグマが燃えるのにも酸素がいるのではと、思いますが、どうやって酸素を得ているのですか?太陽も不思議です。よろしくお願いします。
(03/07/04)
bashar:社会人:46
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A |
岩石の融ける温度は岩石の種類によって異なりますが,日本で見られるような普通の岩石の場合,800度から1200度程度で融かすことができます.
6000度という数字は太陽の表面温度か地球の中心の温度だと思います.また,岩石やそれが融けて出来るマグマはもうすでに酸素とくっついてできている
酸化物なので,「燃える」という表現は適当ではありません.
たき火や台所のガスレンジなどでもそれらの炎の一部は岩石の融点を超す温度になっていますが,これらを用いて岩石を融かすのはなかなか困難です.岩石を
融かすためには「熱」を岩石に与えて岩石の温度を融点まで高める必要があります.一方,「熱」受け取った岩石は,伝導や放射などでもらった「熱」をどん
どん周囲に放出してしまいます.したがって,岩石を融かすためには放出されるよりも多くの「熱」を岩石に与えて岩石自体の温度を融点まで上げる必要があ
ります.このためには,岩石のぐるり周囲を融点をはるかに超える温度で囲んであげる必要があります.製鉄所の溶鉱炉などはこうした温度を実現できます
し,融かす対象物が小さなもので良いのならば,工事現場で見かける酸素ーアセチレンバーナーなどでも3000度を超えるような温度を実現できるので,こ
の炎を当てれば岩石を融かすことが可能です.焼き物や工芸用に市販されている電気炉やガス炉でも製品によっては十分に温度を上げることができます.
研究などで少量の岩石を溶融させる場合には,プラチナ(融点1772度)など融かす対象よりも高融点の材質でできたるつぼに入れて,電気炉で融かしてい
ます.
(03/26/04)
安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)
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