火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火をとらえる

重力測定・重力変化


Question #103
Q この前、三瓶山に関する質問をされている方がいらっしゃいました。私も島根県に住んでいるので、興味深く拝見しました。 ところで、その質問に対する回答の中に「重力測定」とか「低重力異常」という用語が出てくるのですが、専門の知識がない私にはこれらの意味が全くわかりません。お手数ですが、できるだけ分かりやすく解説していただければ幸いです。 また、回答の中に「明瞭な低重力異常が存在し、その形は多角形状である」とありますが、このことからどのような言えるのでしょうか。こちらの方も、よろしくお願いいたします。

(7/15/98)

やみぞ:会社員:30

A
 わかりにくい回答をしていまい,失礼をいたしました. このように,回答 に対する質問も歓迎しております. 


 重力測定とは,重力の強さ(や方向)を測ることです.また,低重力異常と は,重力の強度が周囲よりも低くなっていることをいいます.(重力異常とい っても人に体で感じるほど違う訳ではなく,ごくわずかなものです).重力異 常の主な原因としては,その土地の地下を構成する岩石の密度に違いにありま す.すなわち,地下に密度の高い岩石があれば重力は強く,密度の低い岩石が あれば重力は弱くなります. 


  さて,三瓶火山は,4×6kmほどの凹地(三瓶カルデラ)とその内側の溶岩ド ーム群からなります.このカルデラについて重力測定を行ったところ,はっき りとした重力の低異常がみつかりました(小室ほか,1996).すなわち,三瓶カ ルデラは地表に凹地形があるだけではなく,基盤をなす花崗岩にもへこみがあ り,そのへこみを密度の低い火山岩が埋めているのです.その低異常の地域の 広がりは四角い形をしていました.なぜ,四角いのかについては,はっきりし たことはわかっていません.1つの案としては,カルデラができる前にマグマ の上昇によってこの地域一帯に隆起が起こり,その時にブロック状に陥没が起 こったためではないか,と小室ほか(1996)では推察しています. (7/21/98)

星住英夫(工業技術院・地質調査所・地質部)


Question #769
Q 小生、三宅島に住んでおります。 きょう(2000.7.22)現在不安な日々を過ごしております。
さて、今回の噴火に関する火山噴火予知連絡会の記者会見資料の中で、「三宅島島内の重力の時間変化」というのがありますが、重力って地球上どこでも一定ではないのですか。 時間や場所で変わる物なのですか。 また重力を調べることがどうして噴火の予知につながるのですか。
よろしくおねがいします。

(07/22/00)

さだぞう:自営業:38

A 最初の問に対するお答え. 重力は時間や場所で変わるものであり,「地球上どこでも一定」ではありません.お そらく,それに人類が気づいたのは1672年のフランス人リシェーの振子時計に関する 報告が最初でしょう.振子の周期Tは重力加速度の平方根に反比例します.場所によ って重力が違うなら,振子の周期も場所によって異なるはずです.実際,フランスで 正確に調整した時計を赤道地方にもっていくと,振子の周期が延びてしまい,時計が 1日あたり2分28秒も遅れてしまうのです.

第2の問(火山活動と重力変化の関係)に対するお答え. 火道のような空隙を伝わって,重いマグマが地下深部から上昇してきたと想定しまし ょう.ここで高校の物理学でならうようにニュートンの万有引力の法則がはたらくこ とを思い出しましょう.つまり2つの物体の間には引力がはたらき,その大きさは質 量に比例し,距離に反比例します.ですからマグマに近いところには大きな引力が働 き,遠いところには小さな引力がはたらきます.引力の変化は重力の変化としてとら えられます.したがって,地上の重力変化をくまなく測定するとマグマの水平位置や 深さ,質量などを推定することができます.逆にマグマが地下深くに戻っていくとき には,重力の大きな減少が認められるはずです.7/22の資料にはこのような減少がみ とめられています. (8/05/00)

大久保修平(東京大学・地震研究所)