一般に火山の火口列の方向は地殻に作用する横方向からの圧力の向きと平行
に並ぶ場合が多いことが知られています。この現象は四角い粘土のブロックを
真上から見て、押しつける方向だけに板を当てて、板を押しつけると粘土はこ
れと垂直な両側に逃げて、結局、押しつけた方向と平行な割れ目が入るという
現象に似ています。東北ではこれと同様に東西の方向から押しつけられていま
すので、垂直な東西方向の割れ目ができやすいことになり、これが火口の配列
に反映されているということになります。ですから、火口配列が東西というこ
とは横からの圧力が東西であることと調和的です。
さて逆断層というのは、横からの圧力で斜めに片側の地盤が盛り上がるよう
な動きをする断層です。こうした断層は横からの圧力の方向と垂直に伸びま
す。地震は断層のすべりで起きますので、地震波の解析によってどんな力でず
れ動いたかを知ることができます。その解析結果ではほぼ東西方向からの圧力
によって動いたことがわかりました。
したがって、火口の配列と地震はともに地殻に東西からの力がかかっている
ことを示しているので似ているというわけです。ただし、厳密には舌足らずの
表現で、最近、東北地方のような逆断層地帯の成層火山の側火口配列は、横ず
れ断層や正断層地域の火山のようにきれいに配列しないことが分かってきまし
たし、ここでは単に圧力と表現しましたが、2つの割れ目の応力の状態は異な
っています。推進本部の地震調査委員会のコメントの主旨は、大勢としては主
圧縮応力軸と呼ぶ地殻にかかっている最大の圧縮の方向が、地震と火山、ある
いは知られている活断層などから見てすべて同一の方向を示しているというこ
とだと思います。
(9/11/98)
佐藤比呂志(東京大学・地震研究所)
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