火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火をとらえる

火山性地震・火山性微動


Question #32
Q 火山物理について教えて下さい。 僕は、地震の波形を用いて噴火予知をしたいのですが、現在この分野はどこまで進んでい るのでしょうか。そして、どこの大学院に行けばそのような研究ができるのでしょうか。 ~ 個人的な質問ですみません。 (6/20/97)

進路をなやむ大学生:大学生:20歳

A
 地震学的なアプローチで火山に迫りたいということですね。
 火山で地震波形を使ってなにかをするということであれば、その対象は大き く分けて2つあると思います。
 1つは火山性微動。火山性微動とは、火山の周辺だけで観測される、波形の 始まりと終わりがはっきりしない地動波形の総称です。短いものは数秒から、 長いものは数週間続くものまでありますし、その見かけも様々です。この火山 性微動が火道を構成する地殻の割れ目の振動で説明できる(ハワイやアラスカ の火山に研究例がある)とか、火道内部の火山ガスの柱の自励振動であると か、様々な学説があり、まだ定説がありません。未だ発展途上の研究対象で す。しかし、経験的にはその振幅と卓越周波数の変化が火山活動の指標になっ ています。下の火山性地震に比べて発生源の推定や波のモードの特定が難し く、古くから知られてはいるもののまだまだ未開拓の分野です。
 2つは火山性地震。火山性微動とは、その始まりと終わりが明確に定義でき る点が異なりますが、火山体の内部やその周辺ごく近傍で発生する地震を指す 名称です。この名前で分類される地震も様々な波形を示しますが、火山活動の 推移にともなって発生する場所や波形が変化してきます。火山性地震について は震源で働く力の様子などが火山活動に関連して研究されて成果を上げてきて います。
 上の2項目に関しては観測技術の進歩に伴い、より広帯域の地震計を用いて 震源近傍での波形を対象として、噴火のプロセスを解明する研究も進行中で す。
 あと、人工地震を使用してその走時や波形から火山の内部構造を調べる計画 も現在進行中です。火山によってその成果はまちまちですがこれもまだまだ未 開拓の分野なので、大いに若い力の参入を期待したいところです。
 最後に、火山で地震関係の研究テーマが選べる大学院ですが、私が知ってい る限りでは、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、九州 大学の大学院理学(系)研究科などです。

筒井智樹(京大・理・地球熱学研究施設火山研究センター,旧火山観測施設)


Question #76
Q 岩手山の火山性地震が頻発しています。今後、噴火の可能性はどの程度あるのでしょうか。私は記者として現在、岩手山の火山活動を取材中ですが、今後の見通しがわからず悩んでいます.良き見解をお示し下さるようよろしくお願いいたします。 (5/12/98)

ゆうき:記者:25

A
 噴火の具体的可能性を言うのはかなり難しい問題です.桜島火山のような頻 繁に噴火を繰り返す火山においては,度重なる観測結果の蓄積から,噴火と地 殻変動・地震活動の規則性がある程度導かれています.そのような極めて限ら れた(噴火経歴と観測が豊富な)火山においては,噴火や爆発の可能性をある 程度言うことができるようになってきています.一方,火山ごとに噴火のパタ ーンが違うように,噴火の前兆現象も火山ごとに少しづつ異なります.そのた め,桜島のパターンをそのまま岩手山に当てはめるわけにはいきません.
 岩手山は東北大学と気象庁などが中心となって,以前から地震活動や地殻変 動の観測を続けており,今年3月頃から次第に活動レベルが上がってきている ことを指摘していました.地震活動が活発化し地殻変動が起こっていることか ら,マグマが地表に接近してきていることは明らかです.
 岩手山では有史時代の噴火が何回かありますが,噴火の観測をした経験が蓄 積されているわけではありません.このため,噴火する可能性がありうるとし か,現状では言いようがないと思います.岩手山でいったい噴火がおこるの かどうかは,新聞記者のみならず国民全体の興味かもしれません.しかし,そ の可能性や見通しを数値や時期などでいうことは今のところ不可能です.
 火山研究者にとっては,今の現象を科学的にできるだけ正確に理解すること と,過去の噴火例や地質を調べ,ひとたび噴火が起きたらどうような噴火様式 でどのような災害が起きうるかを調査することが重要になっています. (5/13/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #128
Q 前から疑問に思っていたことを質問します。 地震の波形の事についてです。 よく、高校の教科書等に載っている波形には、 P波とS波がありますが、P波よりもS波の方が揺れ方が大きい(振幅が大きい)ような気が するのですが、もしそうなら、それは、P波よりも、S波のエネルギーが大きいからでしょうか? それとも、また別の原因でしょうか? また、波形をよく観察すると、S波よりもP波の方がゆっくり揺れている(周期が長い)と思うのですが、 その原因を教えてください。 また、上記のような現象は、火山の周辺で発生する地震全てに言える事ですか? (9/24/98)

ふじわら:公務員:27

A
 最後の方からお答えします。結論からいうと、火山の周辺でも観測記録上で P波部分よりS波部分の方が、かならず大きいということはありません。P波部 分のほうが大きい記録も時々見かけます。また、どれがP波でどれがS波か判別 がしにくい記録(我々は「火山性微動」と呼ぶことがあります)もあります。


 しかし、大多数の地震ではS波部分の振幅の方が大きい傾向があります。ま た、ある一つの観測点の記録でS波がP波より大きいからといって、かならずし も他の観測点でもS波が相対的に大きくなるとは限らず、震源から見た観測点 の方位と距離によってこの相対的な振幅の割合が系統的に変わります。


 火山にかぎらず一般に起きる地震は、地下の岩盤などで、ストレス(ひず み)として蓄えられたエネルギーが、その岩盤の破壊によって解放されたもの です。そのストレスの解放のしかたには、膨張または収縮などの体積変化を起 こすようなモードのもの、断層面の両側でずれ(剪断)をおこすようなモード のものなど、複数の基本的なパターンがあることが知られています。


 実際の地震の発生ではこの複数のモードが複合して岩盤の破壊を引き起こし ます。このうち、多くの場合圧倒的にエネルギー解放量が大きいのが、断層面 の両側で「ずれ」をおこすモードです。この「ずれ」をおこすモードではS波 のほうにエネルギーが多く分配されます。したがって、観測記録上でP波より もS波のほうが振幅が大きいことが多いのは、この理由で説明できます。さら に冒頭でも述べたように、震源から見た観測点の方位や距離によって地震波の 見え方が異なるのは、この断層がずれるモードが中心的な働きをしているから なのです。火山地帯では火山活動の段階によっては、断層がずれるモードば かりではなく、膨張などの体積変化をおこすモードのエネルギー解放がある程 度大きくなることもあります。この種のメカニズムは火山性地震の特定のタイ プに対応しています。


 それから、S波とP波の見かけの周期の差にお気づきのようですね。私自身の 認識ではP波よりもS波の方が周期が長く見える場合が多いと思います。ともあ れ、これは地震が「波」として震源から観測点までを伝播する際に、その波が 通ってくる経路の影響の差が反映されたものです。地球の内部がそのような性 質をもっているのです。


 実際に震源のごく近傍ではこれらの波の見かけの周期の差は少なく、相対的 な振幅の差を除いてはP波もS波も同じように見えます。一般に同じ距離を伝播 する場合、P波よりもS波の方が周期が短い成分ほど減衰がおおきい傾向があり ます。また、P波かS波のどちらか一方に注目すると、伝播距離が長くなれば長 くなるほど、短周期の成分が衰えます。これは、距離の差による雷鳴の聞こえ 方と似ています。落雷の近傍では「バシッ!」という短い大きな音がするの に、遠く離れたら「どーん」という間延びした低い音になり、もっと遠くでは 「ごろごろ」ともっと低い音になるという現象と同じでして、雷鳴の音程の差 を、地震記録上での見かけの周期の差と理解してもらうとよろしいでしょう。


 あと、これは余談ですが、実際に地震波形をパソコンで取り込んで、音に変 換すると雷のような音になります。 (9/28/98)

筒井智樹(京都大学・地球熱学研究施設火山研究センター)


Question #152
Q 空震とは、どのようなものを言うのでしょうか。震度計と空震計は、どうちがうのでしょうか。また空震と噴火の関係(火山性微動と火山性地震の関係も)を教えてください。 (10/27/98)

Taka:公務員:33

A
 空震(空振)とは,火山の爆発や火砕流の発生により火口周辺の空気が 動かされ,その振動が遠くまで伝わる現象です.噴火の衝撃で窓ガラスが 震えたりするのも,この空振が発生するからです.空振計のセンサーは基 本的にはマイクロフォンです.風が強いとその振動が記録されます.


 一方,震度は,地震によって地面が揺れる強さを階級で示したもので す.この階級(震度2とか震度3とか)は,かつては気象台職員などが各 自の体感で決めていました.が,最近では,地面が揺れる際の加速度を計 測し,それを基に客観的に震度を決める計器が用いられるようになりまし た.これが震度計です.加速度や地面の変位そのものを測るのは,地震計 と呼ばれています.


 まとめると,空気の振動を測るのが空振計,地面の振動を測るのが地震 計,地震計のデータをもとに震度を決めるのが震度計,ということになり ます.それぞれの機械は,名前は似ていますが,測ろうとする振動現象の 種類や設置する目的が異なっているんです.設置する場所なども,当然な がら違ってきます.


 さて,空振に戻ります.火山の噴火は,地下の物質を空気中に放出する 現象ですから,結果として周囲の空気を乱すことになります.爆発的な噴 火が起きれば,衝撃的な空気振動が生じます(ボンという音を想像してく ださい).一般的には,爆発が大きければ空振も大きくなります.です が,噴火現象は単純ではないので,厳密な比例関係は成り立ちませんが. また,噴煙柱が立ち登るような噴火では,空振は衝撃的なものではなく, 連続的な振動になります(ゴーという音を想像してください).


 火山性地震,火山性微動は,いずれも火山の活動に関連した地面の振動 です.これまでの話に関連させると,空振計ではなく地震計で記録される 振動ということになります.地震と微動の区別は,主に振動の継続時間に よってなされることになります.火山性地震は単発的な振動で,地下でな んらかの破壊現象が起きて発生すると考えられています.一方火山性微動 は,振動が数十秒から数分,時には何時間も継続する現象で,地下のマグ マやガス,熱水といった流体の移動が原因ではないかと考えられていま す.


 以上,似たような単語が並んでわかりにくいかもしれませんが,ご理解 いただけましたでしょうか.ご不明な点があれば,またご質問ください. また今後は,できれば質問だけでなく,その背景(どうして知りたくなっ たのか)を少しでも書いていただけると嬉しいです.こちらもお答えしや すいし,応答ももっと楽しくなると思います. (10/28/98)

西村裕一(北海道大学・理・有珠火山観測所)


Question #386
Q 初めて質問させていただきます。私は早稲田大学教育学部の1年で教養程度の地学を学んでおり桜島と鹿児島県の地震について勉強していますが、そこで疑問が1つでてきました。鹿児島県の地震のモニタリングをして気づいたことなのですが、地震が起きる場所は桜島付近ではなくたいてい鹿児島県北西部なのです。たぶん地質学上の理由でしょうが自分の力ではわからないので説明をよろしくお願いいたします。 (01/24/00)

Noriaki:大学生:19

A
 人に感じない小さな地震(微小地震という)まで含めると,我々の周辺では毎日た くさんの地震が発生しています.九州では,以下の地域において特に地震発生頻度が 高くなっています. (1)日向灘や種子島,奄美大島近海 (2)内陸の活断層(日奈久断層や別府−島原地溝帯など)沿い (3)桜島,霧島,阿蘇などの活火山 これらのうち(1)は,太平洋の海底(フィリピン海プレート)が海溝から日本列島 (九州をのせたユーラシアプレート)に沈み込むのにともなって発生し,(2)は, いわゆる内陸の直下型地震です.また,(3)はマグマ活動に関係した火山性地震で す.
 現在,鹿児島県北西部でたくさんの地震が発生していますが,これらは1997年3月 と5月に発生した鹿児島県北西部地震(マグニチュード6.5と6.3)の余震活動です. この地震に対応する活断層は見つかっていませんが,地下の断層が動いたもので,タ イプとしては上記(2)の地震です.
 桜島付近でもたくさんの地震が発生しているのですが,これらは火山性地震で一般 に規模が小さく,専用の観測網(京都大学防災研究所の桜島観測網など)でないと震 源を決定することが難しいのです. (1/31/00)

清水 洋(九州大学・大学院理学研究科・島原地震火山観測所)


Question #643
Q
 有珠山は、火山性地震が起こった後に山腹から噴火しましたが
岩手山は、火山性微動は確認されながら未だに噴火していません。
北海道大学の岡田教授は、「有珠山は、嘘をつかない山と言いま
したが、火山によって噴火する性格があるのですか?逆に、火山
性微動があれば、どんな地形でも噴火するのですか? (06/02/00)

たあさん:大学生:21

A
 有珠山は,珪酸分の多いマグマの火山としては頻繁に噴火を起こす世界でもめずら しい火山です.しかも,過去の噴火の前には必ず地震が群発しました.この癖を利用 して今回も噴火を上手く予想できたわけです.
 火山性微動はいくつかの理由でおこると考えられています.今回の有珠山の噴火前 には,はっきりとした火山性微動は観測されていません.逆に,火山性微動があれば 必ず噴火をするわけでもありません.
 火山性地震や火山性微動が多発してもなかなか噴火には至らない火山がいくつもあ ります.今のところ,岩手山もその例です.噴火を起こすには,山の地形やマグマの 性質によるのではなく,山ごとにもっと複雑な背景があるようです.山によって噴火 にまで至る経緯はさまざまです. (6/3/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1045
Q 最近、浅間山の火山性地震が多発しています。しかし、火山性微動は観測されていないといわれていますが、火山性微動が観測されなければ、大規模な噴火は起きないと言う事なのでしょうか。もし、大規模な噴火や地震が起こるとすれば、被害はどの程度であると考えられますか。
そして、最近日本各地で起こっている火山活動と、今回の浅間山の火山性地震との関連はあるのでしょうか。

(09/21/00)

wm:アルバイト:19歳

A
 まず、浅間山の火山性地震と、最近活発な日本各地の火山活動との関連性ですが、 数十年以下の時間スケールで見れば関係はないようです。たまたま活動が活発になっ たのが同じ時期だったのでしょう。


 それから、火山性微動が観測されなければ大規模な噴火がおきないかどうかですが 、これは一概に答えられないと思います。火山性微動と火山性地震の区別は実際には すこしあいまいなところがあって、火山性地震が数秒間隔で起きた場合には火山性微 動と見なされることもあります。火山性微動にしろ火山性地震にしろ火山内部の活動 を示していますから、そのどちらかが、あるいは両方の規模が大きくなりかつ発生の 頻度を高めるようであれば要注意です。特に浅間山を中心として広い範囲で有感地震 や有感微動、鳴動などが頻繁に感じられるようであれば、活動の規模は大きい(自分 にも避難などの必要が出てくるなど)と思って間違いないでしょう。


 これまでの浅間山の活動の歴史をひもときますと、大きな活動としては227年前の 天明三年のものが知られています。天明三年の噴火では熱泥流による北麓の集落の壊 滅、鬼押し出し溶岩流の流出などが記録に残されています(このへんの記録の概略は 丸善から出されている理科年表にも紹介がされています)。このことから考えると、 天明三年の活動と同じぐらいの規模の活動が起きた場合、火口から半径20km以内では 何らかの被害を被るとかんがえてよいでしょう。またそれから離れていても長野新幹 線や上越新幹線、高速自動車道などが降灰によって運休や通行制限などになることは 必至でしょう。


 今回の浅間山の火山性地震がこのような活動につながるものかどうかについては、 私にはなんともお答えのしようがありません。 (9/23/00)


 筒井智樹(秋田大学工学資源学部)


Question #1187
Q 火山性地震についてお聞きします。いろいろな古い本を読むとA型地震、B型地震、爆発地震という区分があるようですが科学技術庁防災科学研究所KNetに掲載されているようなマグニチュード3クラス以上の有珠山の火山性地震三宅島の火山性地震は、すべて爆発地震と考えたほうがよろしいでしょうか?? (10/23/00)

YY:学生:24

A 爆発地震とは,爆発的噴火そのものによって生じる地震のことです.爆発地震の特徴 としては,爆発音や空振を伴うこと,地震波はすべての観測点で押し波で観測される ことが多いこと,等が挙げられます.桜島が爆発的な噴火を起こす際には,このよう な爆発地震がよく記録されます.

さて,今回の有珠山や三宅島の地震のうち,K-Net で記録されているような規模が大 きな地震は爆発地震ではありません.両火山とも空振を伴う炸裂型の噴火は繰り返し ましたが,個々の炸裂に対応する地震は観測されませんでした. 有珠山や三宅島の地震が火山活動に関係していることは事実ですが,地震の特徴は活 断層などで発生するものと基本的に同じと考えられます.すなわち,分類するとした ら,ほとんどがA型地震でしょう.

爆発などの表面現象を伴わない火山性地震をA型地震,B型地震と分けるやり方は,震 源や波形の特徴をあらわす際に便利なので最近でも使われることがあります.ただ, 一般には明瞭に区別されるものではなく,その中間型のイベントはたくさん起きてい ます.また,火山から少し離れたところで起きる地震(三宅島の例ではたくさんあり ますが)を,どこまで火山性地震と呼ぶか,ここは見解の分かれるところです.すな わち,火山で起きる地震の分類基準は,山によっても,また分ける方針によっても結 構違っていることがあるんです.

西村裕一(北海道大学・大学院理学研究科・地震火山センター(有珠火山観測所))


Question #2171
Q 火山性地震といわゆる普通の地震との違いをご教示ください。普通の地震では形の上でもP波・S波・表面波が認められといわれますが、火山性地震の場合はどのような特徴があるのでしょうか。火山性地震には低周波地震と高周波地震があると聞きました。どのようにしてそれらが発生するのでしょうか? (03/09/02)

山親父:公務員:54歳

A
 多くの場合、地震記録だけからでは「火山性地震」といわゆる「ふつうの地震」は 区別できません。両方ともP波とS波と(場合によっては表面波も)が発生しますし、 深い場所で起きた場合には記録の上でP波、S波がはっきりと区別できますから、どち らも同じような波形が記録されます。
 「火山性地震」と「ふつうの地震」との区別はその地震が発生した場所を手がかり にします。つまり、火山とその近くの特定の範囲内で起きた地震を「火山性地震」、 それ以外の範囲で起きた地震をいわゆる「ふつうの地震」とします。さらに、火山と その近くの特定の範囲の広さというのは、火山ごとに経験的に決められています。
 冒頭で、「多くの場合....」と書きましたが、波形の特徴から「火山性地震」 とはっきりとわかる場合もあります。それは、火山の内部の浅い場所で地震が起きる 時です。このような時には地震記録の上でP波とS波、表面波との区別がつきにくくな ってくることがあります。このようになったら地震が起きた場所を決められなくても 間違いなく「火山性地震」です。「???」と思われるかもしれませんが、「火山性 地震」には「観測記録上の特徴だけでは区別できないタイプ」と「区別できる特徴を もつタイプ」とが複数あるのです。火山で地震観測をしているとこれらの種類分けで 悩むものなのです。
 それから、最近、富士山の深部低周波地震のことが話題に上ることが多いですが、 低周波地震と高周波地震との区別はもっぱら地震記録にあらわれた周波数(一秒間に ピークがあらわれる回数)をもとに分類されます。記録された震動の周波数が、通常 に記録される例より目立って低い場合に「低周波地震」として扱われます。低周波地 震と高周波地震という2つのタイプは震源の動き方の違い(たとえば地下の岩盤の一 部が壊れる速さ)を反映していると考えられています。ふつうの例より時間をかけて 震源がゆっくり動くと低周波地震になります。震源にゆっくりとした動きが出る理由 は地下のマグマなどの流体と関連したものと考えられています。
 (3/27/2002)

筒井智樹(秋田大学・工学資源学部・地球資源学科) --