噴火をとらえる
低周波地震 |
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Question #204
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Q |
富士山では、年に数回低周波地震が観測されていますが、その原因、火山活動との関連及び最近の状況について教えて下さい。
近年頻発している新島、神津島近海の地震は、伊豆半島東方沖のようにマグマとの動きとの関連があるのか、現在判明している範囲で教えて下さい。
よろしくおねがいします。
(4/2/99)
冨永:団体職員:33
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A |
富士山の低周波地震は、深さ10〜20kmという地殻の中程で発生しています。
このように、火山直下の地殻のやや深いところからマントルの最上部で、低周波
地震が発生していることは、1980年代からわかり始めました。噴火に呼応して、
活発化する場合もあることから、地下のマグマの動きと関連して発生しているこ
とは間違いないでしょうが、その詳細は不明です。
富士山では、観測網が整備された1980年以後、1年間に10〜20回程度の割合
での低周波地震活動が観測されています。静穏期や頻発期があるものの、現在も
この傾向は変わっていません。
(4/5/99)
鵜川元雄(科学技術庁・防災科学技術研究所)
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Question #1537
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Q |
生徒に「富士山の低周波地震って,何?」と質問され,答えに窮してしまいました。
どんなものなのか教えてください。
(02/06/01)
ビッグ・ボイス:中学校教員:27
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A |
富士山の最近の地震活動や噴火の可能性などについて、この質問を含んで数多く寄
せられました。ここでは地震活動についてだけまとめて回答します。
低周波地震ですが、文字の通りに、低周波(長周期)の地震波を放出する地震のこ
とです。普通の地震は1秒間に10回以上揺れてすぐに終わるのですが、低周波地震で
は1秒間に数回しか揺れず、しかも長く継続するのが特徴です。低周波地震はマグマ
の活動に関係あると言われてはいますが、どうして低周波地震が発生するのかはきち
んと解明されていません。
約2年前このQ&Aのコーナーに、富士山の低周波地震に関する質問(#204)に対し
て、富士山の地震を研究を続けていらっしゃる鵜川元雄(科学技術庁・防災科学技術
研究所)さんは以下のようにお答えになっています。「富士山の低周波地震は、深さ
10〜20kmという地殻の中程で発生しています。このように、火山直下の地殻のやや深
いところからマントルの最上部で、低周波地震が発生していることは、1980年代から
わかり始めました。噴火に呼応して、活発化する場合もあることから、地下のマグマ
の動きと関連して発生していることは間違いないでしょうが、その詳細は不明です。
富士山では、観測網が整備された1980年以後、1年間に10〜20回程度の割合での
低周波地震活動が観測されています。静穏期や頻発期があるものの、現在もこの傾向
は変わっていません。(1999年4月5日)」
気象庁によると富士山では、昨年10月から年末にかけて、低周波地震の発生頻度が
月回数で100〜200回と急に増え、最近20年間の観測のなかでは最も多いものでした。
しかしこのこと以外、特に地下のマグマが活発化したことを示す兆候は今のところ捕
らえられていません。
富士山が噴火した場合については、このコーナーの#1350、#1405の回答も参考に
して下さい。
また、富士山の噴火に関するホームページがいくつかありますのでそちらも参考に
して下さい。
静岡大学小山さんのページ
静岡県防災局小澤さんのページ
地質調査所東宮さんのページ
(02/19/01)
ホームページ管理者
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Question #1836
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Q |
今自由研究で富士山の低周波地震についてやっているのですが、低周波地震がマグマの動きと関係しているだろうというのは、低周波地震がマグマのある位置でおこっているから、マグマの動きと関係があるだろうということなのか、それとも、地下深くで低周波地震がおこっているので、おそらくそこにマグマがあって動いているのだろうということなのですか?マグマだまりの位置はわかっていないのですか?
あと、ほかにも低周波地震が現在起こっている山や、昔起こっていた山があったら教えて下さい。
(08/05/01)
みっこ:中学生:14
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A |
(1)低周波地震は火山の火口周辺の浅い場所では、しばしば観測される地震です
が、深さ10kmより深いところ、すなわち地殻深部やマントルの上部では、そのような
低周波地震は限られた場所でしか観測されません。その多くは火山地域の下で発見さ
れています。このため火山の活動と関係していると考えているのです。
またほとんどの低周波地震は噴火と関係なく発生しているのですが、なかには噴火
の活発化と同じころに発生した場合があります。フィリピンのピナツボ山は1991年
6月に大噴火をしました。このときは5月下旬にピナツボ火山の下、30kmくらいの深
さで低周波地震がたくさん発生しました。日本では1998年に岩手山の火山活動が活発
化しましたが、そのときも深さ10kmくらいと深さ30kmくらいの2カ所で低周波地震が
たくさん起こりました。このことからマグマが地下で動く時に低周波地震が発生しや
すくなると考えられます。
(2)マグマ溜まりでは、溶けたものがあるため地震の波がゆっくりと伝わると性質
があります。このため地下の地震波速度の空間分布を詳しく調べ、地震波速度の遅い
場所にマグマ溜まりがあると考えられています。
東北地方では深さ200kmくらいまでの地震波速度の分布がよく調べられています。
それによると低周波地震は地震波速度の遅い場所の周辺、すなわちマグマ溜まりの周
りで発生しているようです。
低周波地震とマグマ活動がどのように関係しているのかはまだわかっていません。
(3)低周波地震が火山の深いところで発生していることがわかったのは、微小地震
を調べる観測網が整った1980年代始めです。ですから活動の様子がわかるのは古くて
も1980年以降です。
日本では、低周波地震について、富士山の他に北海道の十勝岳、岩手山や安達太良
山、磐梯山等の東北地方の火山、榛名山や日光白根山など関東地方の火山、伊豆大島
や三宅島等の伊豆諸島の火山など、20火山以上で報告があります。
海外でもハワイのキラウエア火山、フィリピンのピナツボ山、アラスカのスパー火
山など、10火山地域以上で観測されたという報告があります。これらの地震は、ほ
とんどがマグニチュード3より小さい微小地震と呼ばれる地震なので、地震の観測設
備の整った火山地域でないと観測できません。日本は地震の観測網が世界一整備され
たところなので、たくさんの火山で低周波地震が見つかっています。
(8/07/01)
鵜川元雄(防災科学技術研究所・固体地球研究部門)
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Question #2171
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Q |
火山性地震といわゆる普通の地震との違いをご教示ください。普通の地震では形の上でもP波・S波・表面波が認められといわれますが、火山性地震の場合はどのような特徴があるのでしょうか。火山性地震には低周波地震と高周波地震があると聞きました。どのようにしてそれらが発生するのでしょうか?
(03/09/02)
山親父:公務員:54歳
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A |
多くの場合、地震記録だけからでは「火山性地震」といわゆる「ふつうの地震」は
区別できません。両方ともP波とS波と(場合によっては表面波も)が発生しますし、
深い場所で起きた場合には記録の上でP波、S波がはっきりと区別できますから、どち
らも同じような波形が記録されます。
「火山性地震」と「ふつうの地震」との区別はその地震が発生した場所を手がかり
にします。つまり、火山とその近くの特定の範囲内で起きた地震を「火山性地震」、
それ以外の範囲で起きた地震をいわゆる「ふつうの地震」とします。さらに、火山と
その近くの特定の範囲の広さというのは、火山ごとに経験的に決められています。
冒頭で、「多くの場合....」と書きましたが、波形の特徴から「火山性地震」
とはっきりとわかる場合もあります。それは、火山の内部の浅い場所で地震が起きる
時です。このような時には地震記録の上でP波とS波、表面波との区別がつきにくくな
ってくることがあります。このようになったら地震が起きた場所を決められなくても
間違いなく「火山性地震」です。「???」と思われるかもしれませんが、「火山性
地震」には「観測記録上の特徴だけでは区別できないタイプ」と「区別できる特徴を
もつタイプ」とが複数あるのです。火山で地震観測をしているとこれらの種類分けで
悩むものなのです。
それから、最近、富士山の深部低周波地震のことが話題に上ることが多いですが、
低周波地震と高周波地震との区別はもっぱら地震記録にあらわれた周波数(一秒間に
ピークがあらわれる回数)をもとに分類されます。記録された震動の周波数が、通常
に記録される例より目立って低い場合に「低周波地震」として扱われます。低周波地
震と高周波地震という2つのタイプは震源の動き方の違い(たとえば地下の岩盤の一
部が壊れる速さ)を反映していると考えられています。ふつうの例より時間をかけて
震源がゆっくり動くと低周波地震になります。震源にゆっくりとした動きが出る理由
は地下のマグマなどの流体と関連したものと考えられています。
(3/27/2002)
筒井智樹(秋田大学・工学資源学部・地球資源学科)
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