噴火をとらえる
噴火予知 |
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Question #32
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Q |
火山物理について教えて下さい。
僕は、地震の波形を用いて噴火予知をしたいのですが、現在この分野はどこまで進んでい
るのでしょうか。そして、どこの大学院に行けばそのような研究ができるのでしょうか。
~
個人的な質問ですみません。
(6/20/97)
進路をなやむ大学生:大学生:20歳
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A |
地震学的なアプローチで火山に迫りたいということですね。
火山で地震波形を使ってなにかをするということであれば、その対象は大き
く分けて2つあると思います。
1つは火山性微動。火山性微動とは、火山の周辺だけで観測される、波形の
始まりと終わりがはっきりしない地動波形の総称です。短いものは数秒から、
長いものは数週間続くものまでありますし、その見かけも様々です。この火山
性微動が火道を構成する地殻の割れ目の振動で説明できる(ハワイやアラスカ
の火山に研究例がある)とか、火道内部の火山ガスの柱の自励振動であると
か、様々な学説があり、まだ定説がありません。未だ発展途上の研究対象で
す。しかし、経験的にはその振幅と卓越周波数の変化が火山活動の指標になっ
ています。下の火山性地震に比べて発生源の推定や波のモードの特定が難し
く、古くから知られてはいるもののまだまだ未開拓の分野です。
2つは火山性地震。火山性微動とは、その始まりと終わりが明確に定義でき
る点が異なりますが、火山体の内部やその周辺ごく近傍で発生する地震を指す
名称です。この名前で分類される地震も様々な波形を示しますが、火山活動の
推移にともなって発生する場所や波形が変化してきます。火山性地震について
は震源で働く力の様子などが火山活動に関連して研究されて成果を上げてきて
います。
上の2項目に関しては観測技術の進歩に伴い、より広帯域の地震計を用いて
震源近傍での波形を対象として、噴火のプロセスを解明する研究も進行中で
す。
あと、人工地震を使用してその走時や波形から火山の内部構造を調べる計画
も現在進行中です。火山によってその成果はまちまちですがこれもまだまだ未
開拓の分野なので、大いに若い力の参入を期待したいところです。
最後に、火山で地震関係の研究テーマが選べる大学院ですが、私が知ってい
る限りでは、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、九州
大学の大学院理学(系)研究科などです。
筒井智樹(京大・理・地球熱学研究施設火山研究センター,旧火山観測施設)
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Question #205
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Q |
はじめて拝見させていただきました。とても勉強になりました。これからも期待しております。
さて、当方現在中学生向けの理科の教材を編集いたしております。
3年で火山が出てくるのですが、資料を見て下記の2点について興味がわき、質問させていただきます。
@火山噴火の予知について 具体的にはどのような方法で行っているのですか? 微動の観察以外にありましたら教えて下さい。
A噴火の危険度を数値化するという記事を見たのですが、主な山の数値とその数値の意味を教えて下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。
(4/8/99)
黒い呪術師:会社員:38
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A |
(1)火山噴火の予知について
マグマが地下にたまって地表から噴出するときのことを想像してみてください.物
質がたまるのですから,山は膨らむでしょう.この膨らみをGPSといって人工衛星
を使った装置で観測したり,傾斜計や体積歪計などで観測しています.また,物質が
たまって上昇すれば,あちこちに力が加わりますから地震や微動が起きます.また,
マグマそのものやマグマから出てきた高温のガスが上昇して地下水と接触すると微動
が起きたり,火山ガスの成分が変わったり,地熱異常が起きたりします.地下の温度
も上がりますから,岩石の持つ磁場の強さが変化して地磁気の異常が起きる場合もあ
ります.このようなさまざまな観測で異常現象を捉えようとしています.もっともこ
うした多項目の観測を行っている火山はごく限られています.観測を充実させるには
納税者のみなさんの支援(+叱咤)が必要なのです.
また,噴火の予測には異常現象を捉える努力だけではなく,過去の噴火の状態を詳
しく調べて,噴火の平均的な間隔や噴火の様式などを調べる努力も行われています.
よく週刊誌などに「・・・・のおつげで富士山が噴火する」とか「次の噴火は富士山
」などという記事が出たりして,そのたびに問い合わせを受ける火山学者もいます.
観測データからは噴火を示唆するデータは全くないのですが,たとえば「今後1年く
らいは噴火することはあり得ない」ときっぱり否定できないのが実情です.情報の空
白のを埋めるようにいろいろなデマが出てくるわけですから,こうした調査で噴火の
長期的予測をたてる研究も必要です.
(2)噴火の危険度を数値化について
この数値化は火山噴火予知連絡会のワーキンググループで検討されてきましたが,
具体的にはそれぞれの火山の活動状況や地元の社会的環境によって工夫する必要があ
り,その検討が気象庁の方で行われているようです.試案の段階では,活動レベル0
の「静穏な状態」から,レベル4の「火山周辺に影響の及ぶ中〜大噴火が発生か可能
性大」までランク付けして公表するというものです.これまではややもすると「・・
・・なので注意が必要」といった情報だけが出されて,安全になったという情報など
はあまり出ていません.火山学が進歩して,よりわかるようになった情報は納税者に
還元していこうという趣旨と私は理解しています.多くのみなさんがこの趣旨をご理
解いただき,情報を有効に利用していただけたらと考えています.
ところで,こうしたレベル化は,実は日本が世界に先がけておこなうものではあり
ません.アメリカ合衆国ではずっと以前から火山活動をレベル化して情報を出してい
ます.また,米国地質調査所のホームページには,いくつかの活火山の活動状況が掲
載されていて,毎週更新されています.現在の日本の場合は,活動に異常が出て臨時
火山情報が出されても,地元のテレビ・ラジオ・新聞で報道されることはあっても他
の地方でこの種の情報を入手することは簡単ではありません.たとえば,東京からあ
る火山の付近に旅行しようとした人が,その火山について活動状況を知ることはほと
んど不可能です.最近,多地方からの観光客が遭難するニュースをしばしば耳にしま
すが,米国地質調査所のホームページのような体制があれば,こうした事故も少なく
なるでしょう.よりよい情報をみなさんが受け取るためには,納税者としてみなさん
が私たちを支援していただき,かつ納税者の権利として私たちを叱咤して情報を要求
していただくことが大切だと思います.蛇足ながら,火山活動のレベル化は
「先進国」である米国ばかりではなく,多くの方が「途上国」と思っていらっしゃる
インドネシアでも行われていて,その情報がちゃんと機能していることも付け加えて
おきます.
米国地質調査所のロングバレーのページから入るといろいろと示唆に富んだ情報が
得られます.政府がその国の国民を保護するというのはどういうことか?政府は納税
者に対してどのような義務を負っているのか?という明確な思想が感じられます.
http://quake.wr.usgs.gov/VOLCANOES/LongValley/
インドネシアの火山調査所のホームページは最新の活動状況が載せられているわけで
はありませんが,観測体制を知ることはできます.
http://mekira.gsi-mc.go.jp/index.html
もちろん日本も何もしていないのではなく,たとえば国土地理院のページではGPS
を公表しています.
http://mekira.gsi-mc.go.jp/index.html
(5/10/99)
鍵山恒臣(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #385
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Q |
先日、桜島に旅行に行った際、南岳の噴火活動を間近で見て、とても感動しました。
同時に、麓(火口から2〜3q?)にいくつも町があることを知り、大噴火になった場合を想像すると恐ろしくなりました。
昭和、大正、安永、文明等々、大噴火が発生しているようですが、桜島の噴火活動が活発化する周期(大噴火予知)などは、研究されているのでしょうか?
(01/20/00)
温泉ファン:会社員:34
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A |
桜島は世界的にみても活発な火山の一つですが,噴火予知についてもひじょうに詳
しく研究されている火山です.地震や地殻変動のようすが常にモニターされ,火山学
的にみれば小規模な現在の噴火でも,かなりの確率でわかるようになっています.大
正噴火や安永噴火のように大規模なものなら,ほぼ確実にわかるのではないかと期待
されています.さて,桜島の大噴火の周期についてです.昭和噴火(1946),大正
噴火(1914),安永噴火(1779-82),文明噴火(1471-1476)という4大噴火
と呼ばれるものの間隔をみると,それぞれ32年,132年,303年です.とても周期
という言葉は使えないことがわかります.桜島の活動は,北隣にある霧島火山の活動
や日向灘で起こる地震との関連が考えられたりしていますが,よくわかっていません.
かなり規則正しい間隔で大噴火を起こしている日本の火山には,三宅島や有珠山など
があります.
(2/28/00)
井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)
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Question #383
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Q |
火山に興味があるものです。
次の質問があります。
1 噴火(防災上)の危険度(確率)をどのようにして定義するのか
2 上記の定義は世界共通となっているのか
以上よろしくお願いします。
(01/18/00)
大塚 典彰:公務員:27
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A |
さて、この回答は難しいです
四つの質問が混じっているようにおもいます
噴火の確率 噴火予知予測の問題でしょう
噴火の危険度 噴火現象ごとに異なる火山災害の種類ごとの危険度
防災上の確率 損害保険料率とかになるのか
防災上の危険度 これは、ハザードマップとしてなにかしら作られている
世界的にも同様ではないかと想像します
(2/17/00)
千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)
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Question #643
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Q |
有珠山は、火山性地震が起こった後に山腹から噴火しましたが
岩手山は、火山性微動は確認されながら未だに噴火していません。
北海道大学の岡田教授は、「有珠山は、嘘をつかない山と言いま
したが、火山によって噴火する性格があるのですか?逆に、火山
性微動があれば、どんな地形でも噴火するのですか?
(06/02/00)
たあさん:大学生:21
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A |
有珠山は,珪酸分の多いマグマの火山としては頻繁に噴火を起こす世界でもめずら
しい火山です.しかも,過去の噴火の前には必ず地震が群発しました.この癖を利用
して今回も噴火を上手く予想できたわけです.
火山性微動はいくつかの理由でおこると考えられています.今回の有珠山の噴火前
には,はっきりとした火山性微動は観測されていません.逆に,火山性微動があれば
必ず噴火をするわけでもありません.
火山性地震や火山性微動が多発してもなかなか噴火には至らない火山がいくつもあ
ります.今のところ,岩手山もその例です.噴火を起こすには,山の地形やマグマの
性質によるのではなく,山ごとにもっと複雑な背景があるようです.山によって噴火
にまで至る経緯はさまざまです.
(6/3/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #769
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Q |
小生、三宅島に住んでおります。 きょう(2000.7.22)現在不安な日々を過ごしております。
さて、今回の噴火に関する火山噴火予知連絡会の記者会見資料の中で、「三宅島島内の重力の時間変化」というのがありますが、重力って地球上どこでも一定ではないのですか。 時間や場所で変わる物なのですか。 また重力を調べることがどうして噴火の予知につながるのですか。
よろしくおねがいします。
(07/22/00)
さだぞう:自営業:38
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A |
最初の問に対するお答え.
重力は時間や場所で変わるものであり,「地球上どこでも一定」ではありません.お
そらく,それに人類が気づいたのは1672年のフランス人リシェーの振子時計に関する
報告が最初でしょう.振子の周期Tは重力加速度の平方根に反比例します.場所によ
って重力が違うなら,振子の周期も場所によって異なるはずです.実際,フランスで
正確に調整した時計を赤道地方にもっていくと,振子の周期が延びてしまい,時計が
1日あたり2分28秒も遅れてしまうのです.
第2の問(火山活動と重力変化の関係)に対するお答え.
火道のような空隙を伝わって,重いマグマが地下深部から上昇してきたと想定しまし
ょう.ここで高校の物理学でならうようにニュートンの万有引力の法則がはたらくこ
とを思い出しましょう.つまり2つの物体の間には引力がはたらき,その大きさは質
量に比例し,距離に反比例します.ですからマグマに近いところには大きな引力が働
き,遠いところには小さな引力がはたらきます.引力の変化は重力の変化としてとら
えられます.したがって,地上の重力変化をくまなく測定するとマグマの水平位置や
深さ,質量などを推定することができます.逆にマグマが地下深くに戻っていくとき
には,重力の大きな減少が認められるはずです.7/22の資料にはこのような減少がみ
とめられています.
(8/05/00)
大久保修平(東京大学・地震研究所)
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Question #1625
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Q |
火山の噴火の予知のために、火山から出る物質の中に含まれている同位体の比率を測るのはなぜですか?
(03/15/01)
T.A.:大学生:21
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A |
火山から出てくる物質は,マグマに由来する物質と,それ以外の起源を有する物質の
混合物です.例えば,H2Oの場合なら,火山ガスや火山性温泉水に含まれるH2Oは,マ
グマから抜け出てきたH2Oと,地下水に由来するH2Oの混合物です.火山活動が活発に
なると,マグマから抜け出てきた物質の量が増えるので,火山から出てくる物質の中
において,マグマに由来する物質の割合が増加します.マグマから抜け出てきた物質
と,それ以外の起源を有する物質の同位体比は異なりますので,結果として, 火山
活動の変化に伴い,火山から出てくる物質の同位体比は変化すると予測されます.こ
のような事情で,火山噴火予知のために,物質の同位体比を測定することは重要と考
えられています.
(3/21/01)
大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)
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Question #1722
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Q |
温泉井戸と火山活動との関連性について質問があります。
北海道駒ケ岳付付近に宿泊施設があり、その敷地内から温泉をくみ上げているのですが
最近温泉の水位上昇,水温低下,水が濁る等の変化がありました。
この温泉は、地下1000m以上のところまでボーリングを行い、温泉をくみ上げています。
駒ケ岳火山活動による関係があるのでしょうか。
また、過去にこのような事例があったのでしょうか。
よろしくお願いします。
(05/21/01)
SAD:会社員:27
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A |
火山周辺に湧出する温泉や地下水は,火山活動に伴って様々な変化を示すことがあ
ります.火山活動に伴って温泉や地下水に異常が認めらた場合,以下のことが考えら
れます.
(a)火山活動に伴いマグマから放出された熱や火山ガスなどが帯水層に影響を与え
る.
−>温度上昇,水質変化,水位変化.
(b)マグマの移動・発泡などにより地殻が変形する.
−>水位変化.
(c)噴火活動の際,激しい地震動によって帯水層が乱される.
−>水位変化,水質変化.
(d)マグマの移動・貫入等に伴い火口や断裂帯等が形成される.
−>新たに熱泥水や温泉,地下水が噴出.
予想される変化を比較して見ますと,(a)は温度上昇や水質変化が主で,場合に
よっては水位変化が生じることもあります.異常は噴火後しばらくしてから現れる場
合の多いのが特徴です.それに対し,(b)と(c)は主に水位変化として短時間に
発生します.(d)はそれまで温泉や地下水が湧出していなかった場所に新たに出現
します.
火山活動や噴火によって生じる温泉や地下水の異常は多くの火山で観測されていま
す.
北海道での比較的最近の事例を取り上げますと,十勝岳1989年の噴火活動の際,山
麓の温泉では泉温上昇,塩化物イオン濃度やナトリウムイオン濃度が顕著に増加しま
した.この噴火では,それまでは低温で利用できなかった泉源が泉温上昇により浴用
可能となり,吹上温泉として多くの観光客が訪れる露天風呂(無料)として人気を博
しています.昨年,噴火した有珠山では,山体を中心とした広い範囲で噴火前に水位
異常が観測されました.この現象は,噴火の前兆として注目されました.有珠山北麓
の洞爺湖温泉・壮瞥温泉では,噴火後には100mにも及ぶ水位上昇が観測されたり,顕
著な泉温上昇や水質変化も観測され,現時点でも噴火前の状況には戻っていません.
ご質問の北海道駒ヶ岳山麓でも1996年の噴火後,深度700〜1500mのボーリング井か
ら汲み上げられている温泉の水質が変化したことが報告されています.しかし,深部
ボーリングにより開発された温泉源は,井戸障害による水位変化や水温変化,更には
水質変化を引き起こす場合もありますので,注意する必要があります.駒ヶ岳周辺で
は浅部(深度300〜600m程度)で25〜35℃前後の良好な帯水層が発達する地域もある
ため,実際に井戸障害により浅部帯水層から低温水が流入して水位上昇,泉温低下,
泉質変化が生じている温泉井戸もあります.したがって,ご質問に正確にお答えする
には,該当する井戸の掘削位置,井戸構造,もし定期的に観測しているのであれば水
位や水温等のデータがあれば,より明確な回答が可能になると思います.
更に,詳しいことをお知りになりたければ地質研の秋田(011-747-2211 ext432)
まで直接問い合わせ下さい.
(05/25/01)
秋田藤夫(北海道立地質研究所・ 環境地質部)
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Question #119
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Q |
私は実家が鹿児島で子供のころ桜島に住んでいたこともあります。先日お盆に帰省した時、阿蘇を経由して帰っ
たのですが火口を覗けるところまで行けるのでびっくりしました。予兆もなく突然噴火する心配はないのでしょ
うか?また、桜島は玄武岩質の溶岩で粘土が高いため大正3年に爆発した際には溶岩でたばこの火をつけたとい
うようなエピソードも聞きましたが阿蘇の溶岩はどうなのでしょうか?それぞれの溶岩の組成なども併せて教
えてください。
(8/29/98)
宮口雅史:会社員:441
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A |
ご質問は以下の二つのポイントであろうと思います。
(1)噴火の際には何らかの予兆現象があるか?
(2)阿蘇と桜島とでは噴出物の組成などが違うのか?
まず(1)に関してですが、一口に「噴火」といってもいろいろな時間スケ
ールの現象を含んでいます。ご質問の文章から推測しますに、阿蘇での場合
で、特に生命の危険を感じるような爆発について予兆があるのかというご質
問であろうと思います。
阿蘇の場合で一番注意しなければならない破壊力の大きい「噴火」のタイプ
は、火口直下の過剰な水蒸気圧が引き起こす水蒸気爆発です。この水蒸気爆
発では火口内部に堆積した岩の塊を大量に吹き飛ばします(このタイプの活
動は規模が小さくて噴出物が火口の縁を越えない場合には「土砂噴出」と阿
蘇では表現されています。噴出物が火口の縁を越えるとはじめて「噴火」と
いう扱いをされます)。阿蘇での犠牲者の多くはこのような破壊的な活動に遭
遇しています。少なくとも、阿蘇の場合ではいわゆる「噴火」のまえには
(阿蘇の場合は「噴火」と表現された場合に必ずしもマグマが直接に関与し
ていない現象も含まれています。)、火山性微動の一時的な停止現象がある
ケースが経験的に知られています。しかし、かならず火山性微動が噴火の前
に止まるかというとそうでもなく、突如として土砂噴出の発生をを見るケー
スがあります。また、火山性微動が急に止まったとしても必ず土砂噴出が起
きるとは限りません。また、火口の縁にいる観光客の皆さんが気がつく予兆現
象が表面で起こるかどうかという点についても、はっきりしたものはかならず
しも現れません。
現在の火山観測体制では地殻変動の観測データや火山の周辺に起きる地震の
震源の分布の推移を手がかりにして、活動期が近づいてきたかどうかの判断
はできる水準に達しています。しかし、何時何分に阿蘇中岳火口で水蒸気爆
発がおきるか、という個別の爆発的な活動の予測ができるところにまでは到達
していません。ですから、阿蘇の中岳火口は本来危険な場所でありますし、
噴火の危険をまず頭の中に思い浮かべておいでなのは、健全なことと思いま
す。阿蘇と桜島を比較した場合には阿蘇の方が爆発の規模が小さいのです
が、火口の直近まで人間が近づける分、災害が発生しやすい条件がありま
す。
また、阿蘇と桜島の違いは爆発の規模ばかりではなく、溶岩の組成にも差が
認められています。一番大きな差が珪酸分(SiO2)の含有量の差です。桜島の
比較的最近の溶岩では重量比で60から62%が珪酸分ですが、阿蘇の中岳を含む
中央火口丘(山体を構成する)噴出物では52〜54%のグループと67%のグループ
とが存在すると言われています。また、阿蘇で特筆すべき特徴としてはカリウ
ムの含有量が多いことなのだそうです。珪酸含有量などから推測すると阿蘇
の溶岩は桜島のそれに比べて粘性が少ない可能性がありますが、阿蘇の中岳
に関しては有史以来の溶岩流の流出が記録されていません。1933年〜35年の
大活動期には阿蘇でもハワイの火山のような流動性に富んだ溶岩湖が火口底
に存在していたという記録がありますが、桜島の例のように溶岩流あるいは
溶岩に近寄って観測した例は手元の記録にはありませんでした。
(9/1/98)
筒井智樹(京都大学・理・球熱学研究施設火山研究センター)
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