火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火をとらえる

噴火の制御


Question #188
Q 現在、産業廃棄物の処理を巡ってさまざまな問題が取りざたされております。 その一つが、焼却処理をした場合に発生するダイオキシンの問題です。 これは焼却時の温度が1200℃以上だと問題ないそうですが、この温度を保つのは 難しいみたいです。 そこで、いきなり突拍子もない質問になるのですが、火山の火口に産業廃棄物を ほうり込めば、問題ないと思うのですが如何なものでしょうか? ただし、火山の立地条件としては無人島みたいなところで火口までブツを運べる ことが条件になりますが。 商業ベースでペイするとは思えないのであくまで個人的な興味からなんですけど。

(1/31/99)

Nick:商社勤務:29

A 【溶岩と火口】 溶岩の温度は普通900度から1100度くらいです.溶岩の組成によっては,1200度を越 えるものも存在するかもしれません.ですが,これはあくまで噴火中,もしくは噴出 直後の溶岩の温度でして,実際の火山の火口の中で,このような高温の溶岩がドロド ロと溜まっている状況はほとんど存在しません.あるとしたら,せいぜいハワイくら いでしょうか.他の火山の火口は,噴火中で近づけないか,表面が冷えているか,あ るいは噴出物で閉ざされているはずです.

【放り込む?】 また,化学的なことを考えても,溶岩の組成は単純ではありません.しかも,その組 成は火山により,また同じ火山でも時期により変化します.起こりうる反応をすべて 予測することは簡単ではないでしょう.ご質問のケースでは,高温を得るということ だけで解決を図るのは,やはり単純すぎると思います.自然は複雑でパワフルですか ら,思っても見なかった結果が返ってくるかもしれません.私たちは,こういう例を 多く経験しているはずです.「問題ない」はずはありません.

【火山を制御】 少しはずれますが,個人的には,火山という自然をゴミ処理に利用する発想には,強 く抵抗を感じます.私たちが火山から恩恵を受けることはいいと思いますが,まだま だコントロールできる対象ではありません.例えば,溶岩流については,流れを先端 を止めたり,流路の一部を変えようという試みはなされていますが,実際には「ビル を倒して流れを変えたりできる」のは映画の中だけです.宮沢賢治の「グスコーブド リの伝記」にあるように噴火を制御することは,今日でもまだ夢のような話なのです. (2/3/99)

西村裕一(北海道大学・地震火山研究観測センター)


Question #786
Q 理科の一研究で火山について研究するのですが、噴火の被害を防ぐ方法はあるんですか?
あったら、できるだけくわしく教えてください。
あと、私は長野に住んでいるんですが、周辺に火山はありますか?
有珠山と三宅山などの火山のしゅるいに、違いがあったら教えてください。 (07/27/00)

19:学生:15

A 19さん 学校で火山のことを勉強しているようですね.とても良いことです.せっかく火山に 興味をもった機会ですので,是非とも本を読んでみて下さい.噴火の被害とその防ぎ 方については,以下の本にくわしく書かれています.高校生(中学ですか?)にも理 解できる部分がたくさんあります.


 宇井忠英(編) 「火山噴火と災害」東京大学出版会¥3700
 ISBN4−13−060717−0

公共の図書館などにもあると思います.この本に書かれているように,火山の災害に は実のたくさんの種類のものがあります.ですからそれから身を防ぐ方法も,災害の 種類に応じてたくさんあるのです.また,火山には個性があって,それぞれの火山毎 に災害の種類に特徴があります.ですから,ひとつひとつの火山の個性をちゃんと日 頃から調査しておくことがたいへん重要です.次に長野県のまわりに火山がどれだけ あるかということですが,以下の本に日本の火山の分布が書かれています.


 国立天文台編「理科年表」丸善
 地学団体研究会編「新版地学事典」付図付表
 気象庁「日本活火山総覧(第2版)」

学校か公立の図書館で上の本がないか尋ねてみて下さい.特に「日本活火山総覧(第 2版)」には,日本の活火山83個について噴火の歴史まで書かれていてたいへん勉 強になると思います.それを見るとわかるように,長野県とその近傍には,草津白根 ,浅間,新潟焼,妙高,弥陀ヶ原,焼岳,乗鞍,御岳と,8つの活火山があるのです .

上にあげた本には,それぞれの火山のマグマが固まってできた火山岩の名前,または 二酸化珪素(SiO2)量が書かれています.これが,その火山の噴火の特徴を決定する もっとも大事な要素です.三宅島と有珠とでは,それがちがっていることがわかると 思います.信州のまわりの8つの火山はどちらのタイプになるでしょうか?調べてみ て下さい.

ところで,これだけ調べたらせっかく火山の近くに住んでいるのですから,行って見 たくなりますよね.そうしたら,次の本を手にもって実際に行ってみましょう.


 高橋正樹・小林哲夫(編)
 「フィールドガイド日本の火山」E中部・近畿・中国の火山」築地書館¥2100

これには焼岳・乗鞍・御岳が載っています.同上の@「関東・甲信越の火山T」には 浅間・草津白根・妙高が載っています.また,同上のA「関東・甲信越の火山U」に は新潟焼・八ケ岳が載っています.で,わからないことがあったら,松本の信州大学 理学部の私を訪ねてください. (8/3/00)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #1027
Q はじめまして、ひろきといいます。火山の知識は、義務教育で習った程度しか知りません、
といっても、まじめに勉強してなかったので、なしに等しいですけど(笑)。。よろしくお願いします。

質問です:
最近三宅島の火山が噴火して、たくさんの住民の方が避難してますよね。それで、火山予知の話題を
特集してる、ニュース・番組等がたくさんやっていますが、人間の力で火山の噴火をコントロールすることは、
出来ないのでしょうか?私が考えたのは、単純な発想なんですけど、爆弾などで、山を吹っ飛ばすとか、
穴を開けて、マグマの道を作って、火山以外の場所からマグマを出し、噴火をコントロールするとか、
そのようなことは、可能なのですか?そして、現実にそのようなことが行われたことはないのでしょうか?
唐突な質問で、馬鹿らしいかもしれませんが、ぜひお答えお願いします。。
ではでは。 (09/17/00)

ひろき:高校生:学生:18

A 火山の噴火エネルギーはとても大きなものです.地面に大きな穴を開けて地下のマグ マを地表に吹き出させるためには大変な量のエネルギーが必要です.たとえば,1883 年のクラカトア火山の爆発のエネルギーはTNT火薬で1〜1.5億トンだったと考えられ てます.今回の三宅島の噴火でも,TNT数千〜数万トンに相当するエネルギーが放出 されていると考えられます.これは広島や長崎に投下された原子爆弾に相当するぐら いのエネルギーです.

このような大規模な自然現象に,通常の爆薬で立ち向かうのは,まったくエネルギー 不足です.といって,原子爆弾を使うわけにはいきませんし,使ったとしても,思い 通りに新火口を開けるのは大変難しいでしょうね.

実際,ハワイの1935年のマウナロア火山の噴火の際に,6トンの爆弾投下して,溶岩 流の流れを変えようとの試みがなされましたが,うまくいきませんでした.

長崎県の雲仙普賢岳では1991年に山頂部に溶岩ドームが出現し,それが崩壊してしば しば大きな火砕流が発生しました.溶岩ドームが大きく崩壊するまえに砲撃やミサイ ルでどんどん破壊してしまおうとのアイディアもありました.でも,それがきっかけ で大火砕流が発生してしまうと,麓の町が大きく被害を受ける可能性もあり,責任問 題になってしまいます.結局このアイディアは採用されませんでした.

といって,まったく指をくわえて火山噴火を眺めているわけではありません.流れ出 る溶岩の通路にダムを造ったり,大量の水をかけて冷却して,その流れ出る方向を変 えて町を守るという手法は何度か行われています.1973年のアイスランドのヘイマイ エ島の噴火や1983年のイタリアのエトナ火山での例が有名です.日本でも1983年の三 宅島や1986年の伊豆大島の溶岩流でも消防庁によって小規模ながら実施されています . (9/24/00)

松島 健 (九州大学・地震火山観測研究センター島原観測所)