火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火をとらえる

寿命・活動期・噴火の間隔・周期


Question #362
Q 火山ができるまでの道を教えてください。
どこからはじまって、どのくらいで火山は死んでしまうんですか?
それとも火山は永久に噴火し続けるんですか? (12/22/99)

ラン:中学生:15

A 火山の寿命についての質問だと思います.火山の寿命にはいろいろあります.長いも のの代表は,ハワイのようなマントルの深部から熱い物質がわき上がっている場所に できる火山(ホットスポット火山)で,数百万年近くも活動が続いています.日本の ように,海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる場所にできる火山(島弧 型・大陸弧型火山)では,数10万年程度の寿命を持つ火山が多いようです.例えば箱 根火山は50万年近くも活動した老齢の火山ですし,富士山や伊豆大島の三原山は数万 年の年齢を持つまだ若々しい火山です.一方,同じ島弧型火山でも地殻が引っ張られ ている場所にできた伊豆半島の大室山は例外で,一回だけの噴火活動をした火山です .ただ,寿命の長い火山だからといって,いつも溶岩を出しているわけではありませ ん.火山は長い時間をかけてゆっくりゆっくり成長するのです. (12/30/99)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1776
Q 噴火する山と、噴火しない山の違いは何ですか?
噴火しない山はどうやってできるんですか?

(06/26/01)

恵理ちゃん・朋ちゃん:中学生:14

A
 火山にだけしぼった話をします.それ以外の山では地下にマグマがないので噴火を 起こしません.また,地下にマグマがあってもすぐに噴火が起こるわけではありませ ん.
 火山の寿命は火山によってまちまちで,数万年以上の長さになることが普通です. その間じゅう火山の下には,マグマが深部から次から次に補給されてひそみ続けてい ると考えられています.火山は噴火を繰り返すことによって大きくなりますが,噴火 1回当たりの活動時間は数日から数年程度で,長い火山の一生においては「ほんの一 瞬」の出来事にすぎません.また,ひとつの噴火と次の噴火の間隔は,数十年から数 千年と火山ごとにまちまちなのです.
 例えば,富士山はここ約300年間は噴火をしていない火山です.でも,昔はもっと 頻繁に噴火を繰り返していたことを示す記録が残っています.100年も生きることが できない人間にとっては,やや長めに一休みしている火山にすぎないのです.しか し,最近,富士山の地下で低周波地震が多く起こっています.これは,富士山の下に マグマがちゃんとひそんでいることを示す証拠であると考えられています.
 火山がずいぶんと年を取って,地下でマグマが固まってしまい,ほとんど噴火をし なくなっている火山もあります.でも,固まったマグマの余熱で温泉が湧き続けた り,小さな水蒸気爆発を起こすこともあります.ほんとうに「噴火しない火山」とは ずいぶんと年をとった火山ということになります.
 (06/30/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #2219
Q 北海道の三松記念館で買った本を読んでいてふと思ったのですが、溶岩円頂丘や溶岩尖塔は火山の「フタ」になっているそうで、これが増えすぎ、やわらかい場所がなくなった時、火山は噴火する場所がなくなってしまうことになります。
「火山が死ぬ」というのは、火山にこの「フタ」を吹き飛ばす体力もなくなり、やがてマグマが完全に冷えて全部岩になった、という状態のことなのでしょうか?
だとすると有珠山や箱根は、至る所にフタがありますので火山としての寿命が近づいているように思えますが、いかがでしょうか? (05/07/02)

取立人:会社員:30

A
 疑問のような形であちこちフタをされると確かにマグマは出口をふさがれた形にな ります.しかし,これは一時的なもので,マグマがこれをうち破るだけの圧力を地下 で蓄えさえすれば再び噴火は起きます.普賢岳の噴火でできた溶岩ドームは,昔の溶 岩ドームがいくつも積み重なった上にでてきました(月見団子を積み上げた上に別の 団子を乗せるように).マグマが火山のわざわざ高い場所や,いったん,フタをされ た場所をわざわざ好んで噴火するのも不思議な話ですね.しっかりしたフタだと思っ ているのが実は割れ目がたくさんあって隙間だらけなのかもしれません.
 その火山が永久に活動を停止する(火山が死ぬ)と言うことは,地下深部からのマ グマの供給が途絶え,火山直下の溜まりに残っていたマグマも冷え固まってしまうこ とでしょう.ご指摘のようなフタができてしまうことが火山が活動を永久に停止する 直接の原因ではないでしょう.
 (05/09/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2561
Q ホット・スポットについて質問したいのですが、
@、ハワイホット・スポットから西に続く海山列を見ると、何千年(もしかして何億年?)も前から火山活動が続いているようですが、ハワイのようなホット・スポットは一体いつ、どのようにして誕生したのでしょうか?
A、インドのデカン高原はインドのはるか南方沖にある、レユニオンホット・スポット(レユニオン島)の活動により形成されたそうですが、他のホット・スポットでも(例えばハワイホット・スポット等でも)デカン高原のような大規模な溶岩台地が形成されたことはあるのでしょうか?
B、ハワイなどのホット・スポットの寿命はどのくらいあるのでしょうか?例えばレユニオンホット・スポットの活動を見るとデカン高原を形成したころに比べればだいぶ弱まっているような気がしますが、このまま下火になりやがて消滅してしまうことはないのでしょうか?
以上、3つの質問ですが、よろしくお願いします。
PS、以前の私の質問に答えて下さった先生方、本当にありがとうございました。 (08/29/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A

ハワイから西に続く海山列はおよそ7000万年前までさかのぼれます.それより古い部 分はアリューシャン海溝に沈んでしまっているため,ハワイホットスポットは少なく とも7千万年間は活動しているとしかお答えできません.

海嶺での涌き出しと海溝での沈み込みといったプレート運動のような対流によっては 放出しきれない地球内部のエネルギーを逃がすしくみの一つが,プルームと呼ばれる 円柱状の上昇流です.このプルームが地表の火成活動を引き起こしているところをホ ットスポットと呼びます. プルームがどこから来るのかは,現在でも活発な論争になっている問題ですが,マン トル深部の熱境界層に由来するという考えが一般的です.具体的には,深さ660kmあ たりの上部マントルと下部マントルの境めや,深さ2900kmあたりの下部マントルと外 核の境めあたりです.このあたりにたまった熱が通常のマントル対流や熱伝導では解 消しきれなくなると,この部分の物質が熱膨張による十分に大きな浮力を得て上昇を 開始します.これがプルームの誕生です.

プルーム成長についての室内実験や数値実験の結果から,プルームはマントル内部を 上昇していくにつてれ,大きな頭とそれに続く細い軸からなる形になってゆくと考え られています.よくマッシュルーム状などと形容されますが,キノコを縦割りにした ときの大きなカサの部分と細い軸の部分を想像してみてください. このカサ部分が地球表層に到達すると,例えばデカン高原などに見られるような大規 模な火成活動が引き起こされますが,この継続時間はせいぜい数百万年と考えられて います.それ以降の弱いながらも継続的な火成活動は,プルームの細い軸の部分が地 球表層に到達することによってもたらされたものと考えられています.例えば,イン ド洋のマスカレン海台からレユニオン島に続く火山列の形成がこれにあたります.

現在知られている幾つかのホットスポットにおいて,活動の開始点に溶岩台地などの 大規模な火成活動の痕跡の存在が確認されています.代表的なものとしては,北海沿 岸とグリーンランドに広がる火成活動域は現在のアイスランドホットスポットが活動 を開始した時に作られたものですし,南米のパラナ洪水玄武岩台地は南大西洋のトリ スタン・ダ・クーニャホットスポットの活動開始点です.ただし,ホットスポットの 過去の活動痕跡を遡ることは容易なことではありません.プレートの運動方向や速度 についての情報や火成活動の年代がわからなければならないからです.したがって, 現在知られているすべてのホットスポットについて,活動開始の時期や場所が特定で きているわけではありません.

ホットスポットの寿命(=プルームの寿命)が何で決まるかついては,まだ明解な答 えは得られていません.一億年を越えて活動を続けているプルームもあれば(例えば インド洋のケルゲレンホットスポットや南大西洋のトリスタン・ダ・クーニャホット スポット),一千万年以下で活動を終えてしまったもの(例えばシベリアントラップ )もあります.レユニオンホットスポットは活動開始から6500万年になります.プル ームの発生源の位置,そこからの熱や物質の供給に関する差が,このような寿命の違 いになってあらわれているものと思われます.このことをはっきりさせるためには, 様々なホットスポットについて比較研究を行い,プルームの発生源の違いをより詳し く調べてゆく必要があります. (09/03/02)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #678
Q 私は鹿児島に住む元理科の教師です。
今回の有珠山の噴火については,
近くに桜島という火山もあることもあって,大変興味深くニュースなど
見てまいりました。
さて,質問ですが,
有珠山は約30年に1回の周期で噴火しているという話を聞きました。
しかし,今回の噴火は23年目ということで,いつもの周期より若干早いように思います。
そこで,今回噴火の周期が早まったのは,
噴火の規模や場所に関係があるのでしょうか?
お教え下さい。 (06/20/00)

ash:主婦:30

A
 有珠山は2万年〜1万5000年前ころから活動をはじめ,玄武岩質〜安山岩質の溶岩, スコリアが小さな富士山型の山体をつくったあと,7000〜8000年ほど前に山頂部が崩 壊し,岩なだれを発生しました.その後長い休止期間をおいて,江戸時代の1663年に 噴火活動が再開し,デイサイト質〜流紋岩質のマグマを噴出しました.それ以降1769 年(前の噴火の終了から105年),1822年(同52年),1853年(同30年), 1910年( 同56年),1943年(同33年),1977年(同32年),そして今回2000年(同22年)に噴 火をしました.


 御質問にあるように,確かに,江戸時代以降では過去3回,30数年の間隔をおいて 噴火することがありましたから今回の噴火の前から,多くの火山研究者も経験からこ の先10年以内に噴火の可能性が高く,注意深く観測する必要があるとは考えていまし たが,やはり噴火するのはもう少し先だと思っていた人が多かったと思います.


 さて,噴火の間隔の規則性について,残念ながら現在,そのしくみを充分説明がで きているわけではありません. 一般に噴火がおこるのは, 1. マグマ溜まりの中には,もっと深いところから絶えず少しづつマグマが供給され るが,マグマの圧力がたかまり,耐えきれなくなったところで,地表に達する通り道 を作って,噴火する. 2. マグマ溜まりの中のマグマが過剰でなくても,火山活動以外の理由(たとえば広 い範囲にわたる地殻変動)によって,マグマ溜りにかかる力が増してしぼりだされて 噴火に至る. 3. 火山活動以外の理由(たとえば広い範囲にわたる地殻変動)によって,逆にマグ マの通り道にかかる力が弱くなって容易に上昇できるようになって噴火に至る、など の場合が,考えられます.


 1.のようなしくみが続いていて,しかもマグマの供給量が一定ならば,噴火が同 じような間隔をおいて起こることは理解しやすいと思います.
 そこで,今回の有珠山の噴火を考えてみます.
 もし,最近の有珠山のマグマの供給量自体が増加して1.のしくみで噴火に至った とすれば.噴火の規模(噴火にかかわるマグマの量)は特別に小さいということはな いと考えられます.
 また,2または3の理由で噴火したとすれば(かつマグマの供給量が一定ならば), 前の噴火以降マグマ溜りの中に蓄えられていたマグマの量は少ないと考えられるので ,全体としてやや小規模な噴火で終わる可能性もあります.
 マグマはその時その時に最も楽な(仕事要の少ない)出口(通り道)を探して上昇 すると考えられますので,噴火の間隔と火口の場所はあまり関係がないのではないで しょうか.


 ついでながら,三宅島火山では21〜22年(あるいはその2倍,3倍にあたる40数年, 60数年)の間隔をおいて噴火した例が多く,前回1983年から21年後の2004-5年前後に 噴火するのではないかと注目されています. (6/21/00)

津久井雅志(千葉大学・理学部・地球科学)


Question #2417
Q はじめまして。北海道在住の学生です。噴火の間隔についての質問なのですが、これはどのような条件で決まってくるのでしょうか?また、間隔の幅も火山によってまちまちですが(たとえば、最近の有珠山ならば30年ほどの幅)これは何故なのでしょうか?回答をお願いします。 (07/13/02)

まさ:学生:17

A
 まささん、こんにちは。
 活動的な火山の噴火履歴を見た場合に、多くの火山で噴火の周期性が認められるよ うです。これは火山の地下深部に存在するマグマ溜まりの大きさと、そこにより深く から供給されるマグマの供給率で決まると考えられています。マグマはマントルで発 生したあと、地殻を通過して噴火に至るまでの間に複数の深度で停滞し、マグマ溜ま りを作っています。一番浅く、噴火にいたるマグマが貯蔵されているであろうマグマ 溜まりの深さは、数kmであることが多いようです。マグマ溜まりの状態(深さ、大き さ、形状や周囲の岩石の状態など)や供給されるマグマの性質に大きな変化がない場 合には、マグマ溜まりから噴火に至る条件にはそれほど大きな変化はありません。で すからそのマグマ溜まりに十分のマグマが蓄積すれば噴火する条件が整ったと考えら れます。噴火の周期性がはっきりしている火山(有珠山や2000年噴火以前の三宅島) では、安定した状態のマグマ溜まりに、ほぼ一定の供給率でマグマが供給され、ある 一定量のマグマが溜まると噴火に至ると考えられます。火山毎で噴火間隔が違うの は、マグマ溜まりの大きさやその周囲の岩盤の状態、そしてマグマの供給率が火山毎 で様々なためです。
 この周期性はいつまでも続く訳ではありません。例えば三宅島では過去1000年以上 とは全く違う噴火が2000年起こり、現在も続いています。この噴火では山頂部が陥没 して大きな火口が形成されましたが、このことから地下のマグマ溜まりはこの噴火に よって大きく変わってしまったと考えられます。このため例えマグマ供給率に大きな 変化がなかったとしても、三宅島の噴火周期は今までとは全く別になるのではないか と思います。
 (08/02/02)

中川光弘(北海道大学大学院・理学研究科・地球惑星科学専攻)

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Question #4025
Q 火成岩の放射年代を測るときはマグマが冷え固まったときから測定することを習いました。また、変成岩は変成を受けたときからの年代を測定することができると書いてありました。たとえば花こう岩に近い片麻岩が変成を受けたときからの年代を測定するということですよね。

 質問1 片麻岩が花こう岩に変わった場合、それは花こう岩に変わったときからの年代が測定値としてでると言うことですか?

 質問2 教科書には「放射性同位体は温度と圧力の条件には変わることはない。」と書いてありますが、変成作用というのは、温度・圧力受けるというのですよね?矛盾するように思うのですが。なぜ変成作用を受けた年代がでるのでしょうか? (06/21/03)

うみぞう:高校生:17

A 放射年代測定法がどのようにしてうまく働くか,特に何時時計がスタートするのかと いうのは,大変難しい問題で,たぶん,高校の教科書には簡単に書いてあるのだと思 います. 火山岩のようにマグマが地表に噴出して直ぐに冷えてしまった場合には,比較的簡単 なのですが,花こう岩のようなマグマが地下深部でゆっくり固結した深成岩,片麻岩 などのように長い時間をかけて岩石の組織が変化する変成岩の場合,何時を持って時 計がスタートしたというのか実は大問題なのです.

まず,放射年代測定法の原理ですが,放射性元素と呼ばれる不安定な元素(カリウム 40,ルビジュウム87など,親核種という)が一定の割合で別の元素(アルゴン40,ス トロンチュウム87など,娘核種)に変わる物理現象を用いて,時計がスタートしてか ら現在までの時間を測るものです.そのために必要な情報は,岩石や鉱物に含まれる 時計スタート時の娘核種の量(Do)と現時点での親核種の量(P)と娘核種の量(Dp)で す.それと親核種から娘核種が生成される速度(壊変定数λという)が分かれば
   T=1/λxln(1+(Dp-Do)/P)
という式で求めることが出来ます.この場合,閉鎖系といって,時計がスタートして から現在の間まで,測定対象の岩石や鉱物から親,娘核種のいずれも動いていない, という条件が満たされなければなりません.

次ぎに,何を持って時計がスタートしたというか,ですが,これは,上に述べた閉鎖 系が保たれるようになった時点,ということになります.

岩石,鉱物の中で元素は動こうとしています.これを元素拡散といいます.岩石の温 度が高いほど元素は早く動き回ることが出来ますが,温度が低くなると急に動けなく なります(正確に言えば,拡散速度は絶対温度の逆数に比例して小さくなります.) 元素が早く動ける間は,親核種も娘核種も動いていますので閉鎖系は成り立ちませ ん.しかし,温度が低くなると急激に動けなくなり,ある温度(これを閉鎖温度)を 下回った時点で実質的に全く動かなくなった,すなわち閉鎖系が成立したと考えるこ とが出来るようになります.この時が時計のスタート時点です.

溶岩は,1000度の高温から一気に地表で冷えて固まりますので,噴火した時を時計の スタート時点と見なすことが出来ます.一方,地下でマグマがゆっくり冷えて固まっ た花こう岩の場合,閉鎖温度を下回った時点が時計のスタートです.片麻岩の場合, いったん冷えて固まったかこう岩が再度,加熱され異なる鉱物の組み合わせになるわ けですから,その時点で閉鎖系は破られて時計はリセットされます.それが,冷え始 めて,閉鎖温度を下回った時点で再度時計はスタートします.閉鎖温度は,用いる鉱 物や年代測定法により違います.例えばRb-Sr法という方法で黒雲母や角閃石を使っ て鉱物アイソクロン年代をというのを用いる場合と,K-Ar法という手法で角閃石や黒 雲母を使った年代は異なる年代を与えることがふつうです.複数の測定手法を組み合 わせて,変成岩がどのようなスピードで冷えていったかという冷却の歴史を知る試み も行われています.

これ以上の詳しいことは,大学院の修士課程レベルの知識を持たないと正しくは理解 出来ないと思います.

なお,質問1にある「片麻岩が花こう岩に変わった場合」は,高校レベルでは「花こ う岩が片麻岩に変わった場合」と理解下さい.特殊な例を除いて変成岩から深成岩に は変わりませんので.

また,質問2ですが,「「放射性同位体は温度と圧力の条件には変わることはな い。」というのは,上に述べた親核種が娘核種に一定の速度で変わるという物理現象 は,温度と圧力の変化に影響を受けない,ということです.ですから,どこで岩石が 出来ても,放射年代測定法は利用できるわけです.変成作用の年代が分かるわけは, 上に述べたように,岩石の温度が冷えて,元素が実質的に動かなくなる時に時計がス タートするからだと理解してください.

なお,上に書いた回答は,わかりやすく説明するために,学問的には正確でない表現 の部分がありますが,ご了解下さい.
 (06/22/03)

宇都浩三(産業技術総合研究所・地球科学情報研究部門)


Question #5302
Q 火山が噴火する山はだいたい、決まっているんですかぁ?TOPのページにでてなかったからお聞きいたしました・小学6年なんですけどぉ、よかったら、教えて下さい。(今学校で勉強してるんです)今、調べ学習しているんです。これは、家のPCから送りました♪自分でホームページを見つけ、うれしいです。返事お待ちしています。なるべく速めにお願いします。 (11/21/03)

チカコ♪:小学生:11

A 地球上では、小さな噴火が起こる頻度は大きく、大きな噴火が起こる頻度は少ないのが普通です。火山ごとでもしばしば噴火をするものとたまに大きめの噴火 をするものがあります。これは、火山ごとに放出したいエネルギーが決まっており、小さな噴火でエネルギーを小出しに使うか、大きな噴火で使ってしまうか というような関係だと思えばよいでしょう。噴火する火山が決まっているわけではありません。例えば、諏訪之瀬島や桜島は1年間に何回も噴火をしていま す。三宅島、有珠山などは数十年おきに噴火を繰り返しています。富士山はここ約3百年間噴火がありません。ですから、今度富士山が噴火するとしたら大き めの噴火になる可能性がありうるわけです。
 (11/22/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センタ)


Question #5394
Q こんにちは。いつもありがとうございます。
数年前、神津島を訪問しましたが櫛形山から見た(裏の)天上山は巨大な「一枚岩」そのものでこれがたかだか千年ちょっと前の一回の噴火で出来たのかと思うと足がガタガタ震えたのを覚えています。新島の向山の白ママも凄いスケールですよね。これに比べれば大島も三宅島も一回の噴火の噴出量は少ないなと思えます。

 すべての単成火山/複成火山にあてはまるかどうかは別ですが伊豆諸島に限れば大島、三宅島、八丈島・・の玄武岩複成火山と新島、神津島の単成火山群の特徴の違いとして前者は小〜中規模の噴火を短い周期で繰り返すのに対し、後者は大噴火を前者の10倍以上の周期で起こしているように思えます。周期が違う理由はなんとなく想像できますが噴火の規模が新島、神津島で大きいのはなにか理由があるのでしょうか。重いけれど流動しやすい玄武岩に対して軽いけれど流動しにくい流紋岩、この岩の性質の違いに関係はしてませんでしょうか。(素人考えですが僕は玄武岩質の海洋プレートに流紋岩のマグマ溜りが出来るとしばらくの間は流動性の乏しさから上にあがっては来れないけれど一定以上の量がたまると比重の違いからある程度まとまった量のマグマが一気に上がって来るのでは、と考えています)
よろしくお願いします。 (12/20/03)

アマンタジン:社会人:28

A 火山学の未解決領域について指摘したなかなか鋭いよい質問ですが,それだけに回答は簡単ではありません.「伊豆諸島の玄武岩質複成火山が小〜中規模の噴 火を短い周期で繰り返すのに対して,新島・神津島のような流紋岩質単成火山が規模の比較的大きな噴火を前者の10倍以上の周期で起こしている」というの は正しい指摘です.新島・神津島の最後の噴火は10世紀でした.後半の「流紋岩質マグマは粘性が高く比重が小さいので一定以上溜まらないと噴火できない のでは」という意見は必ずしも正しくありません.このことは有珠火山では17世紀以来300年足らずの間に流紋岩質マグマが比較的大きな噴火を複数回繰 り返しているのをみればわかります.また,新島・神津島の直下にも大陸性地殻が20〜25km程度はあって,必ずしも玄武岩質の海洋地殻ではないので す.火山においてどのくらいの量のマグマがどのくらい間隔で噴出するかは火山によっても違い,その根本原因についてはまだよくわかっていないのが火山学 の現状です.
 (01/05/04)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)