火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山の恵み・火山活動の影響

温泉・湧水


Question #7
Q 私は群馬県に住んでおりますが、温泉地と火山 についてちょっとうかがいます。 休火山のそばの温泉は比較的、湯の量も温度も 少なく低いのですがやはり次第に枯渇してしま う運命なんでしょうか。 幼稚な質問でごめんなさい

(2/13/97)

小川広夫:無職:74

A 温泉の熱源となる火山性の熱源が冷えてしまうまでには一般に数万年から数十 万年かかります。そういう意味では温泉の寿命は半永久的と言ってよいかもし れません。しかし、実際には湯の量がへったり、温度が下がったりすることが あります。これらの変化の原因としていろいろと考えられますが、人為的な要 因もその一つです。例えば、温泉が自噴している所の周辺で、過剰に温泉の揚 水が行われれば、自噴する湯の量が減少したり、自噴が止まってしまうことが あります。

森俊哉(東大理学部)


Question #44
Q 単成火山に興味があります。夏休み、小値賀島に行ってきました。壱岐 には温泉がありますが、小値賀島を中心とする周りの諸島には温泉が噴出していません。 阿武火山、青野山火山の周辺には温泉があります。また徳山北方にも あります。小値賀島に温泉がないのはなぜでしょうか? (9/22/97)

平木 英治:会社員:48

A
 温泉の成因には第一に熱源が必要です。日本の温泉分布を見てみると、ほと んどの温泉が第四紀や新第三紀の火山周辺に密集しているので、火山が温泉の 熱源となっていると考えられます(非火山性の熱源もあります)。平木さんが 挙げられた小値賀島、阿武火山、青野火山群(青野山)などは第四紀の火山 で、温泉の熱源となる母岩があることは十分に考えられます。
 また、温泉の分布は地質条件によっても支配されます。温泉水は、地下深く から断層や割れ目に沿って上昇して、湧出したり、浅所の透水性の地層に滞留 したりします。ですから、断層、割れ目、透水性の地層の有無や位置関係とい った局所的な地質構造によって温泉の分布はきまります。
 さて、小値賀島の場合、現在も熱源となりうる母岩が存在するかどうかはわ かりませんが、局所的な地質構造が影響して温泉が湧出してないことも十分に 考えられると思います。
 ちなみに、小値賀島から南に20kmの新魚目町(中通島)には新魚目温泉 という、単純泉(源泉での温度が27度)の温泉があるそうです。(この温泉 が平木さんの「温泉」に該当するかは分かりませんが...) (9/27/97)

森 俊哉(東京大・理学部)


Question #59
Q おはようございます。私は、鹿児島県旅館組合青年部 橋本龍次郎と申します。突然で、申し訳ないんですが、私の夢を聞いて下さい。鹿児島の地域特性、シンボルでもある桜島ですが、地元では3s(桜島、焼酎、西郷さん)といわれ、あまり活かされていない現状です。そのため、まず、身近にあるものに、もう一度、目を向けてみようという事で『桜島に桜の花を咲かせ、本物の桜の島にして、夜桜のライトアップを、桜島自身の火山エネルギーで可能にし、そこに、市民を集め、夜桜を見、相集い、そして、桜島から見る鹿児島の夜景を見て、喜んでもらい『我が鹿児島のまちを誇りにおもう運動』を考察したいと、願っているのです。 そこで、質問ですが、 1,現在の桜島の、火山エネルギー(地熱、温泉、マグマ...?)で、それをライトアップのエネルギーに変換することが、可能だとおもいますか? 2,桜島に桜の木を植えたら、育つのですか?また、火山灰に桜の苗木はダメージをうけるのでしょうか? 3,桜島に京都大学研究所があるのですが、どなたか、ご進言、アドバイスを頂ける方を、ご紹介していただけないでしょうか? 4,もし、仮に火山エネルギーでライトアップが、可能ならば、その協力団体は、どのような団体になることが、予想されますか? 5,この私の考えに、懸念、ご進言、アドバイスをお願いいたします。

もし、この夢が、かなえば、これから時代を生きる私達の子供たちに、夜に灯る桜島が、桜島自身のエネルギーで灯る(桜島が、私達同様、生きている存在)というメッセージを伝えることが、出来るのではないかと、おもうのです。

大げさですが、たとえ、世界が滅亡しても、桜島だけは、自分のエネルギーで、闇夜のなか、灯っている姿を、想像するだけで、心がふるえます。 ちょっと、最後は、感情オーバーになりましたが、よろしくご進言の程、お願い申し上げます。

尚1998年、11月、『活火山サミット』楽しみにしております。 おじゃったもんせ!!かごっまへ!!

(12/12/97)

橋本 龍次郎:サービス業:33

A
 夢のある壮大な計画ですね.
 マグマの熱を利用した地熱発電は日本でも何ヶ所か実用化されています.鹿 児島県内でも牧園・栗野町の大霧地熱発電所(出力3万kW)と山川町の山川地熱 発電所(3万kW),それと小規模ながら霧島国際ホテル地熱発電所(100kW)の3つ が稼動しています.
 いずれも地下のマグマの熱で温められた熱水を利用した発電施設です.出力 としては十分でしょう.
 熱を直接電力に変換する方法もないわけではありませんが,火山での応用に はまだ解決しなければならない技術的な問題が多いようです.
 桜島は活火山ですし,温泉もありますから,潜在的な能力はあるかもしれま せん.ただし実用化するには,熱水が利用できる場所に十分な量溜まっている 必要があり,そのような場所を見つけて,開発するのには結構な額のお金がか かるのが現状です.またいくら自然のエネルギーとはいえ,それを電力に変換 する機械や施設の維持・管理が必要ですから,そのコストも考えなければなら ないでしょう.
 桜の火山灰や火山ガスに対する耐性はよくわかりません.ただ桜島・南岳火 口から常時噴出している亜硫酸ガスを主体とする火山ガスの植物へのダメージ はかなり大きいと思われます.南岳ではなくて北岳山麓などを選べば火山ガス の影響はある程度避けられるかもしれません.
 いずれにせよ実現するには,予算などかなり大きな話になると思います.ち ょっと直接ご紹介はできかねますが,鹿児島県庁のしかるべき部署などにご相 談されるなどしてみてはいかがでしょうか. (12/29/97)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


Question #90
Q 以前読んだ地学の本に、次の様な内容のことが書いてありました。

「温泉とは本来、地下でマグマが冷えて固まり、最後に水と岩石に成り きれなかった鉱物だけが残り、それが地上に湧き出したものである。 ところが、日本の温泉の99%は、単に地下水が地熱で熱せられただけ である」

そこで質問です。上記の定義に当てはまる残り1%の温泉とは、 どこの何温泉でしょうか。 (6/14/98)

外城 寿哉:大学研究員:33

A 温泉水を分析すると、その水の起源を知ることができます。例えば、温泉水の 水素や酸素の同位体比を調べると、その水が地下水などの循環水に由来するも のなのか、岩漿水(マグマ水)に由来するものなのか、それとも、それらが混 合したものなのかを推定することができます。こうした分析を行うと、ほとん どの温泉で、温泉水の大部分が循環水に由来することがわかります。ただ、す べての温泉で100%循環水に由来するわけではありません。例えば、別府や 箱根ではマグマによる水がそれぞれ約7%と約5%含まれているという分析結 果もあります。

さて、外城さんが読んだ地学の本の中の、99%や1%という数字の出所や、 この一節の前後の文章が、わからないのではっきりしたことはいえません。あ くまでも個人的な感想ですが、もしかしたらこの本の著者は「日本の温泉の多 くで、温泉水の99%が地下水に由来し、残りの1%がマグマ水に由来する」 というようなことを言いたかったのではないのかと感じます。

残念ながら私には、このような定義に当てはまる「残りの1%の温泉」がどこ にあるのかわかりません。もし本当に、そのような温泉があるのならば、私自 身も行って入ってみたいものです。何かの機会に見つけたら教えてください。 (6/16/98)

森 俊哉(東大・理学部・地殻化学実験施設)


Question #116
Q なぜ九州には温泉が多いのでしょうか?

(小5のお嬢さんに代わっての質問) (8/21/98)

中島康明:unknown:unknown

A 九州に活火山が多いために温泉も多いと考えられます。火山の分布と温泉の分 布は良い相関があります。一般に火山がある周辺は地面の中の温度が火山が無 いところに比べて高くなっています。その中を地下水が流れると温められて温 泉水となって湧き出すわけです。しかし火山があればどこでも温泉ができると は限りません。たとえば富士山の周りには天然の温泉がありません。これに対 し九州の霧島火山にはたくさん温泉がありますね。温泉をたくさん伴う火山と そうでない火山があるのです。この違いがどうしてできるかまだよく分かって いません。九州の火山は温泉を伴う火山が多いので温泉が多いと言えます。 (8/22/98)

大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)


Question #196
Q 火山は、人間に被害を与える以上にやくだっているのは、知っているのですが どのように、やくだっているのですか? おしえてください。 (3/2/99)

ゆうこ:学生:13

A お答えします。


 以下に火山が人間のやくにたっている例を、大切な順にいくつか出します。

1)湧水
 降水量(雨が降る量)を比べると、火山の中腹から上の方がそのふもとより多い ものです。でも、火山の中腹より高いところに登ると水が流れているところがあり ません。それは火山に降った雨が全部地面にしみこんでしまうからです。火山はす きまのおおい溶岩でできていますので、砂場につくった山と同じぐらい水がしみこ みやすいのです。このようにしてしみこんだ水が地下をふもとめがけて流れて、ふ もとの溶岩の切れ目から流れ出します。
 これが火山のふもとに多い湧水のすがたです。いわば、天然の浄水装置とでも いったらよいのでしょうか。
 この湧水は豊富でよほどのことがない限り枯れることがありません。どんなに日 照りの年でも枯れることはありません。そして温度も一定です。ふもとでくらす 人々はこの水をつかって暮らしています。この水こそが人間が暮らしてゆく上でな くてはならないものです(水がないと本当にこまりますよ)。これ以上の「やくに たつもの」はないのではないでしょうか。

2)温泉
  火山のまわりには、かならずといっていいほど温泉があります。温泉につかっ てからだとこころの疲れをいやしたり、けがを治したりすることがあります。温泉 でたまごをゆでたり、料理をすることもあります。そればかりか、温泉をほりあて ると、お金がもうかることがあります。

3)軽石
  ある種の火山のまわりには軽石が出ます。この軽石は切り出されて、入浴用と して町で売られています。この軽石がざらざらであることをつかって、人間たちは 風呂に入りながら ひじ や かかと の固いかわをけずって、きもちよく毎日を くらすことができます。 

4)風景
  火山はたいてい特徴のある格好をしています。そしてそのまわりには池や湖が できることが多いです。そして、その中に豊かな植生と動物たちのくらしが包み込 まれています。このような舞台装置があると、人間の目には美しい風景としてうつ ります。
 日本の観光地の多くは火山の周辺にあります。富士山のまわりや桜島のまわりと かが有名ですね。この風景でこころが休まるという役立ちかたもあります。

5)土
  地方によっては、火山から出る火山灰がつもって出来た土があります。これら の土は、水はけが良いという特徴があります。そのために、水はけが良い土地を好 む農作物(ネギやダイコン、キャベツなど)を作るのには絶好の場所になります。 嬬恋のキャベツ、関東平野の深谷ネギや鹿児島の桜島ダイコンなどは有名ですね。 こちらはおいしい方でやくにたっています。また、軽石を含む土が「鹿沼土」とい う名で園芸用に売られていたりします。こちらはさし木をする時の必需品です。
 さらにある種の火山灰が肥料の代わりになるということも知られています。

6)金属資源
  火山は地球の中からいろいろな物質を運んできます。そして火山が噴火活動を やめたあとに山がけずられてその内部が出てくると、そこには地球の内部から運ば れてきた金属類の鉱脈が出来ていることがあります。金、銀、銅、亜鉛、スズなど の金属類は昔々の火山のあとが鉱山になっている場合が多いようです。これも人間 の生活には欠かせないものです。そういえば、活火山で有名な阿蘇山で金脈がみつ かったというニュースも過去にありました。


 まだまだあります・・・。みなさんが呼吸している空気も水も、もとはといえば 昔の火山活動の結果として地球の中から出てきたものといわれています。でも、こ のぐらいにしておきましょう。とにかく、火山が人間のやくにたっているのです。 (3/5/99)

筒井智樹(京都大学・理学部・火山研究センター)


Question #263
Q 学校の自由研究で温泉について調べてくるように言われたのですが、私は温泉の成分と火山の形(火山のでき方)との関連を、テーマに調べているのですが、あまり関連する資料が見つかりません。もしよかったら教えて下さい。 (8/31/99)

那智王:学生:14

A 火山と温泉の関係に関して一般向けに書かれた書物は少ないのですが次のような文献 があります。 1)「岩波講座 地球科学7,火山」 の第8章 2)雑誌,「科学」(岩波書店)の記事,第48巻41−52ページ(1978年) 3)ポピュラーサイエンス,熱水の地球化学 松葉谷治著 裳華房 3は書店で入手できるかもしれませんが1と2は大きな図書館に行って閲覧しなくて はならないと思います。 (9/2/99)

大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)


Question #342
Q 》なぜ、伊豆半島には、温泉が多いのですか?
》なぜ、狭い地域に2種類の温泉が沸くところがあるのですか?(熱海だったら、塩化物泉戸と、硫酸塩泉とか…。温泉のでき方に違いがあるのですか?)
》なぜ、静岡県には、酸性泉、放射能泉が無いのですか? (12/03/99)

Kndo:学生:15

A 伊豆半島の下では太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜り込んでいます。 このため伊豆諸島や伊豆半島には火山が多数存在します。火山の近くでは地下水がマ グマの熱で温められて温泉が形成されます。これが伊豆半島温泉が多い原因です。 狭い地域に異なった水質の温泉が出来る原因は地下で蒸気と熱水が共存しているため と考えられます。温泉が存在する地域の地下では圧力釜のような部分があり,蒸気と 高温の水が共存しています。このとき水の部分には塩化物が溶けやすいのですが蒸気 には塩化物は含まれません。一方,硫化水素というガスは蒸気の方に多く含まれます 。硫化水素は地下を移動する間に酸化されて硫酸になり地下水に溶けて硫酸塩泉を形 成します。高温の水の部分も地下水に混ざり塩化物泉を形成します。このために狭い 地域に異なった泉質の温泉が存在すると考えられます。 静岡県に酸性泉や放射能泉が存在しないかとても少ないのは私には簡単には答えられ ない質問です。火山の種類によって随伴する温泉の泉質には明確な違いが見られます 。すなわち伊豆半島には酸性泉や放射能泉を随伴するタイプの火山がないか少ないと 言えますがこれでは完全な答えにはなっていないでしょう。理論的には答えられない のですが,経験的には玄武岩質の溶岩を出す火山には酸性泉や放射能泉はすくないよ うです。安山岩質〜流紋岩質の溶岩を出す火山は酸性泉や放射能泉を伴うものがいく つか存在するようです。伊豆半島や伊豆諸島の場合は玄武岩質の溶岩を出す火山が多 く存在します。 (12/6/99)

大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)


Question #394
Q 初めて質問させていただきます。温泉の生態と分類についていつもお世話になっている方から質問を受け,インターネットで調べているうちにこちらのホームページへと辿り着きました。ちょっと筋違いな部分があるかと思いますが宜しくお願いします。
その方の持ってきた文献のコピーに『かつて温泉の成因について,マグマから誘導されるものを処女水型温泉と呼び,地表水が地下に浸透し,地熱によって加熱されて再び上昇したものを循環水型温泉と呼び,ほとんどの温泉がいずれかに属すると考えられていた。しかしこの分類の根底には,地球の成因に高温説をとっていたことが含まれていたが,最近では低温説が一般からむかえられているので,処女水型・循環水型の分類は「昔語り的」なものとなってしまった。』という一文があり,この地球の成因の「高温説」「低温説」というのがよく理解できません。いろいろとネットで調べてみたのですがこの2説の詳しい定義がわかりませんでした。この2説の定義,またそれぞれの説においてどのようなプロセスで地球ができたと考えられているのかをお教えください。宜しくお願いいたします。 (02/01/00)

yoo:団体事務:25

A
 温泉の成因について,マグマから誘導されるものと地表水が加熱されたものを区別 する考え方は昔語り的ではありません。マグマから放出される水(マグマから放出さ れた直後は水蒸気)は地表水と比べて同位体比(D/Hや18O/16O)が高いので地表水と 明確に区別できます。マグマから放出される水が100%を占める温泉はまだ見つかっ ていないと思いますが,地表水に若干のマグマから放出される水を含んでいる温泉は たくさんあります。
 地球の成因について低温説というのは私にも理解できません。低温説を主張してい る研究者は多分極めて希であると思います。地球は形成された直後,地殻は存在せず ,マントルの上部あるいは少なくとも表面付近は溶融状態にあったと考えられていま す。地球及び太陽系の成因に関する最近の研究結果については,例えば岩波書店「岩 波講座,地球惑星科学」に詳しく書かれていますのでご参考にして下さるようお願い 致します。 (2/2/00)

大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)


Question #355
Q 初めまして。今、温泉について調べていくうちに火山にたどり着いてしまいました。火山が噴火して温泉ができる歩みを調べているんですが何かいい方法で調べることはないでしょうか?できれば、北海道の駒ヶ岳のことについて調べているんですけど・・・。そして、昔、森町の濁川でも、噴火して温泉ができたと聞いています。そのことについても詳しく教えていただけませんか? (12/17/99)

326:学生:18歳

A こんにちは。 火山のまわりに温泉が多いのは,火山活動に伴ってマグマが浅いところまで上昇し, そのマグマが熱源となって地下水を暖めて温泉を作るからです。最近,火山活動とは 直接関係のない場所で,深いボーリングによって温泉がいたるところに出ていますが ,これらの多くはマグマとは直接関係ありません。地下深いところほど温度が高いの で,どこでも数100から1000m程度の深さでは温泉に適当な温度になっているのです 。温泉の成分等については過去のQ&Aを参考にして下さい(例えばQ342)。

火山が噴火して温泉ができる歩みですが,火山毎に色々で一概には言えません。フィ ールドガイド「日本の火山」(築地書館)などで知りたい火山毎で調べるのがいいか もしれません。あなたは北海道の方のようですのでいくつか例をあげてみます。例え ば洞爺湖温泉や吹上温泉です。洞爺湖では有珠山の明治の噴火以前には温泉がありま せんでしたが,噴火以後に温泉が沸きだして日本有数の温泉街に成長しました。この 明治の噴火ではマグマが温泉街の近くまで上昇して地面を持ち上げ明治新山を作りま した。このごく浅いところまでやってきたマグマが温泉の熱源になったことは明かで しょう。十勝岳の吹上温泉は1962年の噴火以後,1988年までは温泉の温度がどんどん 下がり入浴には適さないほどでした。しかし1989年の噴火以後,温泉の温度はどんど ん上昇して再び脚光をあびるようになりました。この例も火山活動と温泉の密接な関 係を示しています。

北海道の駒ケ岳は日本を代表する活火山のひとつで,現在は西暦1640年の大噴火から 始まった活動期の最中です。1640年以降にも、1694・1856・1929にマグマを放出する かなりの規模の噴火をしています。詳しくは「フィールドガイド・日本の火山3,北 海道の火山」(築地書館)を参考にして下さい。このような活発な活動を続ける火山 なので,鹿部温泉や東大沼温泉などの温泉があります。これらの温泉は山から離れた 山麓にあり,より駒ケ岳に近いところでは温泉ありません。これは火山体では内部は 隙間の多い構造になっており,熱源があっても肝心の地下水が存在しないためです。 火山体深く染み込んだ地下水は山麓部で湧きだしますが,その過程で暖められて温泉 となります。

一方の濁川は約1万年前の噴火によって生じた小型のカルデラです。その時の一連の 噴火活動によってマグマが浅い所まで上昇しています。現在ではマグマはほぼ固まっ ていますが,十分に高温を保っています。つまり高温な岩体が地表近くに存在してい るのです。その岩体を熱源として濁川には温泉が存在しますし,地熱発電も行われて いるのです。 (1/17/00)

中川光弘(北海道大学大学院・理学研究科・地球惑星科学専攻)


Question #1722
Q 温泉井戸と火山活動との関連性について質問があります。
北海道駒ケ岳付付近に宿泊施設があり、その敷地内から温泉をくみ上げているのですが
最近温泉の水位上昇,水温低下,水が濁る等の変化がありました。
この温泉は、地下1000m以上のところまでボーリングを行い、温泉をくみ上げています。
駒ケ岳火山活動による関係があるのでしょうか。
また、過去にこのような事例があったのでしょうか。
よろしくお願いします。 (05/21/01)

SAD:会社員:27

A
 火山周辺に湧出する温泉や地下水は,火山活動に伴って様々な変化を示すことがあ ります.火山活動に伴って温泉や地下水に異常が認めらた場合,以下のことが考えら れます.

(a)火山活動に伴いマグマから放出された熱や火山ガスなどが帯水層に影響を与え る.
  −>温度上昇,水質変化,水位変化.

(b)マグマの移動・発泡などにより地殻が変形する.
  −>水位変化.

(c)噴火活動の際,激しい地震動によって帯水層が乱される.
  −>水位変化,水質変化.

(d)マグマの移動・貫入等に伴い火口や断裂帯等が形成される.
  −>新たに熱泥水や温泉,地下水が噴出.


 予想される変化を比較して見ますと,(a)は温度上昇や水質変化が主で,場合に よっては水位変化が生じることもあります.異常は噴火後しばらくしてから現れる場 合の多いのが特徴です.それに対し,(b)と(c)は主に水位変化として短時間に 発生します.(d)はそれまで温泉や地下水が湧出していなかった場所に新たに出現 します.
 火山活動や噴火によって生じる温泉や地下水の異常は多くの火山で観測されていま す.


 北海道での比較的最近の事例を取り上げますと,十勝岳1989年の噴火活動の際,山 麓の温泉では泉温上昇,塩化物イオン濃度やナトリウムイオン濃度が顕著に増加しま した.この噴火では,それまでは低温で利用できなかった泉源が泉温上昇により浴用 可能となり,吹上温泉として多くの観光客が訪れる露天風呂(無料)として人気を博 しています.昨年,噴火した有珠山では,山体を中心とした広い範囲で噴火前に水位 異常が観測されました.この現象は,噴火の前兆として注目されました.有珠山北麓 の洞爺湖温泉・壮瞥温泉では,噴火後には100mにも及ぶ水位上昇が観測されたり,顕 著な泉温上昇や水質変化も観測され,現時点でも噴火前の状況には戻っていません.


 ご質問の北海道駒ヶ岳山麓でも1996年の噴火後,深度700〜1500mのボーリング井か ら汲み上げられている温泉の水質が変化したことが報告されています.しかし,深部 ボーリングにより開発された温泉源は,井戸障害による水位変化や水温変化,更には 水質変化を引き起こす場合もありますので,注意する必要があります.駒ヶ岳周辺で は浅部(深度300〜600m程度)で25〜35℃前後の良好な帯水層が発達する地域もある ため,実際に井戸障害により浅部帯水層から低温水が流入して水位上昇,泉温低下, 泉質変化が生じている温泉井戸もあります.したがって,ご質問に正確にお答えする には,該当する井戸の掘削位置,井戸構造,もし定期的に観測しているのであれば水 位や水温等のデータがあれば,より明確な回答が可能になると思います.
 更に,詳しいことをお知りになりたければ地質研の秋田(011-747-2211 ext432) まで直接問い合わせ下さい. (05/25/01)

秋田藤夫(北海道立地質研究所・ 環境地質部)


Question #2730
Q ぼくたちは、奈良県吉野郡十津川村にある二村小学校の4年生です。総合学習で火山と温泉について調べています。温泉がわくところには、火山があるとかんがえています。しかし、十津川村には、火山がないようです。どうして温泉が多いのでしょうか。教えてください。  (09/24/02)

耶麻もと:小学生:10歳

A 二村小学校の皆さん,こんにちは. 十津川村のある紀伊半島にはたくさんの温泉がありますね.そしてほんとうに熱い温 泉が多いですね.十津川村の十津川温泉や湯泉地温泉は60℃ほどの温度で湧き出して います.近くの竜神温泉・湯ノ峯温泉(和歌山県)も含めて,これらの紀伊半島の熱 い温泉は地下水が地下にある”熱いもの”によって温められたあと,断層などの割れ 目に沿って地表まで上がってきたものと考えられています.

では,その”熱いもの”とは何でしょう?それは地下にあるマグマです.

紀伊半島では今から1400万年前に火山が活発に活動していました.その頃の紀伊半島 の地下では火山活動を起こすためにたくさんの熱いマグマがあったと考えられていま す.そのマグマが1400万年後の今も完全には冷え切らずに,地下水を温め続けている ようです.

もう少し詳しいことは奈良教育大学地学教室のホームページにある「大和の一億年 -奈良の自然誌-」(http://earth.nara-edu.ac.jp/nishida/y100ma.html)の「温泉」についての解説を一度読んでみて下さい.奈良や十津川村の温泉の話がありますよ.
 (09/25/02)

和田穣隆(奈良教育大学・地学教室)


Question #149
Q 秋田県男鹿半島に在住しています。この地では一の目潟や寒風山の火口跡など様々な過去の火山活動の跡が見られます。 今回の質問というのは、以下の内容が直接に火山活動と関係ありそうかまた、ほかに事例があるかどうかをおたずねしたいのです。 というのは、地下水脈の形成についてです。最近の地下探査で二万年前の火山活動で形成された男鹿半島・寒風山の地下に盆地状にくぼんだ基盤があり、浸透した雨水が基盤の起伏に沿って移動ののちこのくぼみに集まり、あふれる形で湧水となっているという調査結果がありました。これは寒風山の北側に一日二万五千トンもの水量の湧水となり、古来干ばつでも枯れない霊水、名水として地域を潤してきたものです。そばにそれほど高い山もなく小さい半島内にあるこの湧水の集水流域を調査したのが今回のものです。浅学モノの推察として、数度にわたる噴火活動により…地下から噴出物…地盤沈下…その上に堆積…火成岩の山が形成というカルデラ地形の形成に似た経緯でできたのではないか、もしくはできた可能性はないか、ということです。また偶然目にした『地下水盆』という語句についてももし何かありましたらお願いします。さらに阿蘇山などのカルデラ周辺の湧水群などにそういった地下構造の例はないのか併せてお教えください。

(10/21/98)

柏崎 潤一:公務員:39

A
 寒風火山の湧水ですね?その話をするには氷河期の寒風山の状況から説明 する必要があります.ちょっと気の長い話しですがお付き合い下さい.
 寒風山付近では,2〜3万年前に淡水の湖が存在していました.現在の寒風 山のかなりの部分から箱井近辺の低地まで広がっていたと思われます.この 湖の中に堆積したのが箱井層と言われる地層です.寒風火山の溶岩(複数) の一部はこの湖の中に流入しました.溶岩の流入と箱井層の堆積が同時に進 行しましたので,箱井層と溶岩の境界は複雑な形態をしています.
 さて,寒風火山はその後陸化してしまいます.箱井層をためた湖もひあがっ てしまいます.
 箱井層は,透水性が悪いのですが,寒風山の溶岩は水をよく通します.溶 岩を浸透した水は箱井層のところで地下水になって,水平方向に移動を始め ます.したがって,箱井層の上面でも低くなった谷状の地形の部分が地下水 の通り道になっていると考えられます.それの一つの現れが滝川の湧水と考 えています.
 というわけで,寒風山付近の湧水は寒風山の生い立ちと密接な関係を持っ ていると思います.が,カルデラではありません.
 盆地状にくぼんだ構造については,今後調査して行くつもりで,研究計画 を練っております. (11/10/98)

林信太郎(秋田大学・教育文化学部)


Question #292
Q 箱根についての質問です。先日、学校の旅行へ箱根へ行き、箱根が大きなカルデラであることを知りました。現在のようになるまでに、いろいろと噴火を繰り返したそうなのですが、それがいつ頃、どれくらいのものだったのかを知りたいです。あと、芦ノ湖スカイラインの三国山のあたりに、「命の泉」という涌き水があるところがあったのですが、なぜその様な高所に湧き水ができたのかもよければ教えてください。 (10/19/99)

KEI:高校生:15

A 箱根火山の噴火の歴史について
 箱根火山が噴火を始めたのは約50万年前ごろからとされています。そのころは 玄武岩質〜安山岩質のマグマが伊豆大島の1986年の噴火(ストロンボリ式噴火や サブ・プリニー式噴火と呼ばれるタイプ)や桜島でしばしば起こるような爆発 (ブルカノ式噴火)のような噴火をくりかえし、溶岩流やスコリア(穴のたくさ んあいた黒い火山れき)、火山灰の積み重なりからなる富士山に似た成層火山を つくっていたと考えられています。しかし、おおきな一つの火山というよりは、 金時山や明神ヶ岳などのやや小さい成層火山がいくつか集まった火山群であった ようです。スコリア丘(ストロンボリ式噴火でできた小さな丘)や溶岩ドームの 小さな火山もあちこちに沢山つくられました。 噴火のイメージとしては伊豆大島の1986年の噴火(ストロンボリ式噴火やサブ・ プリニー式噴火と呼ばれるタイプ)、桜島でしばしば起こるような爆発(ブルカ ノ式噴火)が挙げられると思います。 
 25万年くらい前になると、デイサイト(石英安山岩)質〜流紋岩質のマグマが 大規模で爆発的な噴火をおこなうようになりました。フィリピンのピナツボ火山 の1991年の噴火のように、噴出した軽石(穴のたくさんあいた白い火山れき)や 火山灰は雨のように降り積もったり(プリニー式噴火と呼ばれるタイプ)、大規 模な火砕流となって流れ下って裾野一帯を埋め尽くしたりしました。そのような 破局的な噴火が火山体の中央部で何回かおこなわれたために、地下の火道周辺の 岩盤やそれまでに出来ていた火山体は大きく破壊され、上に向かって開いた大き な窪地(カルデラ)が出来たとされています。火山体の破壊され残ったところが 古期外輪山と呼ばれる環状の山稜となりました。また、この時期にもカルデラの 外の古期外輪山の御殿場市側と真鶴町側の地域では玄武岩質〜デイサイト質マグ マの小規模な噴火が何回もおこっていて、スコリア丘や溶岩ドームの小さな火山 が沢山つくられています。
 15万年くらい前から8万年くらい前までの間も軽石や火山灰を吹き上げるよう な噴火が続きましたが、カルデラを広げるような大きな噴火は下火になりまし た。また溶岩流も流出するようになり、カルデラの中は屏風山や鷹ノ巣山などの あたらしい火山体(新期外輪山と呼ばれます)で埋め立てられてしまいました。
 8万年前から5万年前までの間にデイサイト質〜流紋岩質のマグマが大規模な爆 発的な噴火を数回おこない、新期外輪山の西部を破壊しふたたびカルデラを形成 しました。5万年前の大噴火の堆積物は良く調べられており、南関東一帯に軽石 が降り積もり(東京軽石層と呼ばれています)、火砕流は四方に流れ、60km以上 はなれた横浜市にまで達したことが知られています。
 5万年前よりあとは安山岩質のマグマが噴出しカルデラ内に神山や駒ヶ岳、双 子山など溶岩流や溶岩ドームをたくさんつくりました(中央火口丘と呼ばれてい ます)。これらの溶岩が噴出する際、溶岩表面の岩塊が崩落してしばしば火砕流 が発生しました。
 最後の溶岩の噴出は約3千年前とされています。このときはまず磐梯山の1888 年の噴火のように、神山の不安定な急斜面が大きく崩れ(水蒸気爆発がひきがね になったのではないかといわれています)、山崩れの堆積物は川をせき止め芦ノ 湖をつくりました。その後間をおいて(200年ぐらい)、崩壊でできた馬蹄形の 窪地のなかに、雲仙火山の1990年〜1995年の活動のように火砕流を発生しながら 溶岩ドームが成長して現在の冠ヶ岳をつくりました。
 3千年前以降は、水蒸気爆発のような小規模な噴火のおきた可能性はあると考 えられますが、具体的な噴出物はしられていません。歴史時代に噴火の記録もな いようです。しかし現在も大涌谷などで激しくガスが噴出している姿をみると、 エネルギーを秘めた油断のならない火山であることが感じられるでしょう。
 以上のような箱根火山の噴火の歴史は箱根での地質調査だけでなく、周辺、特 に風下に位置する大磯丘陵に降った火山灰の積み重なりの調査研究によって明ら かにされてきました。しかしなぜ噴火のしかたが複雑な変化をたどったのかはま だ分かっていません。

「命の泉」について 「命の泉」は私も調査で訪れたことがありますが、芦ノ湖スカイライン沿い、古 期外輪山の峯の一つである三国山の山頂から南南西へ300m程はなれたところにあ ります。ここでは風化した火山灰の層の上を安山岩質の溶岩流が覆っているのが 観察されます。火山灰の層の上部は溶岩流が覆ったときに熱で焼かれて赤くなっ ています。泉の水は溶岩と火山灰の境目から湧き出ているようです。風化した火 山灰層は粘土になっているので水を通しにくく、不透水層となっているのに対 し、溶岩のほうは割れ目がたくさんできているので水の通り道になっているので しょう。この境目は西に10〜15°位の角度で傾いています。おそらく三国山山頂 付近に降った雨水が地下ふかくまで浸み込む途中で不透水層に行き先をはばま れ、不透水層の上面にそって西へ向かって流れて涌き出したと考えられます。こ の泉に雨水を集める範囲は大きく見積もってもせいぜい400m四方ぐらいしかあり ませんが、それだけ箱根の高所は雨が多いということではないでしょうか。 (10/30/99)

長井雅史(東京大学・地震研究所)


Question #3718
Q 火山が人間のために役立つものとして湧水があるということを聞いたことがありますが、伊豆大島でも使われているのでしょうか?またいつ頃から使われ始めたのでしょうか? (12/22/02)

なっつ:学生:18

A 火山噴出物は水を通しやすく,伊豆大島のような比較的新しい火山島だと,常 に水がある川はごく稀で,すぐにしみ込んで,火山体内部には大量の水が蓄え られます.浸透した水は地下の細かい火山灰層などの不透水層の上に溜まり, 溶岩流の下部クリンカーや,降下スコリア層などのすき間が多い層から湧水と してわき出しています.また火山島に限らず海に浮かぶ島によく見られます が,地下に浸透した天水は淡水のため,同じく地下に浸透したより密度の大き な海水の上に浮かぶように存在します.この淡水層の断面形状は凸レンズ状の 形状になるため,数式モデルを提出した人の名前をとってガイベン・ヘルツベ ルグレンズ(G・Hレンズ)と呼ばれます.このG・Hレンズは海水準近くで地表と 交差しますから,島では海岸付近に湧水があることが多いです.伊豆大島では 比較的古い山体が露出する,北東から東の海食崖の途中や崖下付近に多くの湧 水があります.北東部には“泉津”という地名もありますね.この他野増近く に“カッパの池”があります.G・Hレンズからの湧水としては波浮港に海底湧 水があることが知られています

さて伊豆大島は若い火山で,降水はすぐにしみ込んでしまうため,よほどの大 雨の時以外ではほとんど地表水はありません.そのため昔はもっぱら雨水を溜 めて飲料水に使っていたほか,G・Hレンズがつくる淡水層を井戸を掘って利用 していたそうです.雨水利用はとても安定した水資源とは言えませんし,井戸 の方も大量に水を使用する夏季に汲み上げ量が増えると,G・Hレンズに海水が 混入するようになって,少ししょっぱい水になっていたそうです.正確にいつ からかは失念しましたが,現在では,井戸のほかに東の海食崖のフノーの滝の 水を大々的に利用するようになりました.フノーの滝の水源は谷の途中の成層 した湖成層の下からわき出す湧水です.おそらく古い筆島火山とその西側に成 長した伊豆大島火山の間につくられた凹地,または古いカルデラ構造が埋もれ ていて,それが地下水を涵養しているのだろうと考えられます.フノーの滝を 水源にしてから,水不足はほとんど起こらなくなったそうです.伊豆大島の場 合,湧水の大規模な利用は比較的最近ですが,安定した水資源として湧水は非 常に大切なものです.

なお,伊豆大島には縄文早期からの人類遺跡が発見されていますが,それらは 泉津や野増など,噴火の影響を受けにくく,湧水がある場所に多いように見え ます.縄文人たちもいつでも水が得られる,湧水が近い場所を選んで住んでい たのかもしれませんね.
 (12/25/02)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)


Question #3717
Q 火山と植生について質問させて下さい。夏に、伊豆大島の裏砂漠に行ったのですが、霧のようなものがでていましたがあれは火山ガスなのでしょうか?火山ガスと植生にはなにか関係があるのでしょうか?また、玄武岩質と植生についての関係もなにかあるのでしょうか?よろしくお願いします。 (12/22/02)

なっつ:学生:18

A 現在伊豆大島三原山の山頂火口からはほとんど火山ガスは出ていません.いく つか噴気孔はありますが量的ごくわずかです.伊豆大島に限らず,夏の伊豆諸 島では山頂近くは雲がかかっていることが多く,ガスで視界が遮られる日が続 くことがしょっちゅうおこります.のどが痛くなったり,卵が腐ったようなに おいがしなかったのであれば,まず間違いなく普通の霧や雲だと思います.な お霧が出ると目標物がない裏砂漠では道に迷ってしまいがちです.気をつけて くださいね.

植物の専門ではないので,玄武岩地帯に特有の植生があるのかについてはよく わかりません.ただ火山ガスの影響を受けている三宅島をみても,もともと現 地性の植物は,比較的火山ガスに強いものが多く,人間が持ち込んだスギやク ロマツは大きな影響を受けているようです.伊豆大島の裏砂漠は,噴火で降り 積もったスコリアや火山灰で植生がまず破壊され,その後のマグマ後退期に放 出される二酸化硫黄などの火山ガスの影響で植生の回復がさらに遅れることに よるようです.伊豆大島のいわゆる砂漠の分布は,三原山の東北東側と南西側 に延びていますが,これは伊豆大島の卓越風の方向と一致します.風で火山ガ スが流され酸性に弱い植物は定着できず,さらに地表のスコリアや火山灰が風 で移動することで植物が定着しにくいためと考えられます.なお,1986年噴火 のあと,火山ガスの放出はこれまでの噴火より早く終わったため,伊豆大島カ ルデラ内の植生はより早く回復しているようです.
 (12/25/02)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


Question #3922
Q タイの、日本人学校が無い地域で、日本語保持の家庭教師を頼まれている主婦です。自分の専門は社会学なのですが、やむをえず、地理なども教えています。本日、中一の男の子と九州の地理を概観していたら、「火山じゃない山の、泉の水を沸かしても、温泉と一緒なの?」と質問されてしまい、「うわ〜そうだよね〜どうなのかな〜」と、一緒に考え込んでしまいました。ご教示いただけたら幸いです。 (03/28/03)

高原早苗:主婦:40

A
 ご質問のように泉の水を温めると温泉と同じだといえる場合もあります.温 泉の起源はもともと地下水なので,地下にしみこんだ雨水が火山の熱で温めら れて温泉ができる場合があるのです.そのような温泉水は泉と同じような成分 を持っています.火山でなくとも地下は深い場所で温度が高いので,非常に深 い穴を掘ると火山でなくとも温泉が出てくることはあります.
 しかし,多くの場合地下水は火山から熱だけでなく物質も受け取ります.受 け取る物質の成分としては,Cl-(塩化物イオン),SO4--(硫酸イオン), HCO3-(炭酸水素イオン)などです.また熱をもらって温度が上がると,周囲 の岩石と水が反応して,陽イオンや鉱物成分(Na+,K+,Mg+,Ca++,Fe++, Al+++,SiO2)が温泉水に溶け出してきます.そこで温泉水は単純な泉に比べ て一般に溶けている成分の濃度が高いといえます.
 (4/07/03)

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)


Question #3999
Q 一般的な地温勾配を超えるような温度の温泉の起源や分類について調べていてふと思ったのですが,深層熱水によるもの以外の温泉について,一般に「火山性」,「非火山性」等と分けますけれど,「非火山性」といっても何かしら地下に熱源がないと発生しないし,熱源といってもマグマくらいしかないでしょうから,火山性にしても非火山性にしても,どっちもマグマ起源なのではなのかな?,と思い始めたら,火山性,非火山性という区分は,何なのだろうか???と,なんだか混乱してきてしまいました。
「非火山性」とは,何なのでしょう???
ただ時代の区分だけ?なのでしょうか??
マグマ以外の熱源って,あるのでしょうか???
もし,熱源がマグマしかないのであれば,深層熱水以外にこの先発生する温泉は,全て「火山性」ですよね・・・・ (06/06/03)

りょん:会社員:35

A
 地殻内部の高温領域の熱源としては,「生きているマグマ」と「死んだマグマ」が 考えられます.「生きているマグマ」とは溶融した部分を含む高温領域です.「死ん だマグマ」はかつては生きていたが,時間が経って冷えたために殆ど溶けた部分が無 くなった高温領域です.マグマは固化するとマグマと呼ばれなくなるので,「死んだ マグマ」という表現は妥当ではないかもしれません.(注:この「生きているマグ マ」,「死んだマグマ」という言葉は私がこの場のみで使用している語句で日本の火 山学において普遍的に使用されているわけではありません)
 マグマの寿命は,一般的には数十万年程度と考えられています.この寿命の後は 「死んだマグマ」なるわけですが,まだ十分に熱を持っています.これが完全に冷え 切り熱異常のない領域になるまでにはさらに時間が必要で,おそらく数100万年以 上は必要と思われます.日本には多くの火山があります.第四紀(約160万年前から 現在まで)の火山の熱源による温泉水は「火山性」と分類されるでしょう.しかしそ れ以外の温泉は「非火山性」と分類されているのかも知れません.(注:「火山性」 と「非火山性」の分類も確かな判定基準があるわけではなく,研究者の判断によりま す.活火山に関係していない温泉水を「非火山性」としているのではないでしょう か?)「非火山性」と分類された温泉水の熱源が古い火山の「死んだマグマ」に由来 する可能性は十分にあると思います.
 マグマには「生きているマグマ」と「死んだマグマ」の他に発生して間もないため に火山を作っていない「あかちゃんマグマ」も考えられます.有馬温泉という有名な 温泉がありますが,この温泉水のH2Oの同位体比は典型的なマグマ起源のH2Oの特徴を 示しています.有馬周辺には第三紀火山岩類が分布していますが,これが現在の温泉 水に含まれるであろうマグマ性H2Oの起源になっているとは考え難いと思われていま す.そこで,仮説ですが,有馬温泉の下には見つかっていないマグマがあるのではな いかと考えている研究者もいるようです.
 以上をまとめますと,「非火山性」温泉水の熱源として,「死んだマグマ」と「あ かちゃんマグマ」が可能性として考えられます.
 (06/09/03)

大場武(東京工業大学・火山流体研究センター )


Question #4126
Q 豊北町に白滝山という標高600m位の山があります。この山は山頂付近に大きな岩が露出していますが、この岩は安山岩の塊のように見えます。ということは火山の噴火によるものなのでしょうか、それとも造山運動による隆起なのでしょうか。付近の工事現場などでは断層もよく見られます。山口県西部の火山についてはあまり発表されているものを見ません。しかし、西部には多くの温泉があるので火山の存在が発表されていないのが気になってしょうがありません。その点よろしく教えて頂けませんでしょうか。 (08/08/03)

山口県西部の火山に怯えるものより::

A
 私は最近学生さんと豊北町の地質を調べています。おたずねの白滝山(667.6m)にも登山して調べました。私たちの調査では白滝山には流紋岩質溶結 凝灰岩が分布しています。おとなりの天井ヶ岳(691.1m)には安山岩によく似たひん岩という岩石が分布しています。このあたり一帯には,白亜紀の阿 武層群として知られる火山岩が分布しています。お察しのとおり火山地帯であったわけです。それも噴火の規模は大きく,噴出当時,山口県はほとんど火山灰 など火山の噴出物で覆われていたことでしょう。山口県だけでなく,日本列島,さらに太平洋を取り囲む地域では,地球がそれまでに経験したことのないよう な大規模なマグマの活動が行われました。しかし,心配されることはありません。私たちの研究ではマグマの噴出した年代は約8700万年前です。したがっ て火山活動が行われたのははるか大昔のことで,現在は完全に活動を終えた死火山です。山口県で活火山に指定されているのは,萩の笠山などからなる阿武単 成火山群だけです。したがってこのあたりで噴火する可能性はないと思います。
 また,温泉には火山性だけでなく,非火山性の成因のものがあることに注意してください。火山がないところにも温泉はあるのです。山口県の温泉はすべて 非火山性で,泉温が25℃未満の冷鉱泉が多く,全温泉地の82%,全泉源の63%を占めていま す。温泉法では,温泉を温度(物理的性質)と溶解成分(化学的性質)の2本立てで定義し,温泉=(温泉+鉱泉+火山ガス)という考え方をとっているので す。これによれば,温度が25℃以上あれば,溶解成分は何もなくても「温泉」であるし,また,溶解物質があるきまった量を満たしていれば,泉温がいくら 低くても「温泉」になるのです。例えば,山口県には,白亜紀の花崗岩や先述の阿武層群などの火山岩が広く分布するため,ラドンを含む温泉も多いです。御 存知のように湯田温泉,湯本温泉,俵山温泉,川棚温泉は古くから防長四湯としてよく利用されてきた温泉です。
 火山に怯えられることなく,豊北町の大自然や温泉を楽しんでください。白滝山付近には風光明媚な豊北峡など,白亜紀の火山活動がその素材を提供してい る美しい自然がいっぱい残っています。
 (08/22/03)

今岡照喜(山口大学・理学部・化学・地球科学科)