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日本火山学会賞 (Volcanological Society of Japan Award)

第03号 小屋口剛博

受賞対象

「火山現象のモデル化」

授賞理由

 小屋口氏はこの25年間、世界の第一線で火山現象の諸過程に関する定量的なモデル化の研究を行ってきた。マグマ混合過程のアナログ実験から始まり、マグマ溜り内での結晶作用と混合過程、マグマ溜りの形成プロセス、火道流の物理モデルと噴火様式の分岐条件の決定、噴煙柱からの火砕物の拡散過程、マグマと地表水の反応、マグマの破砕条件のモデル化、流体力学に基づく噴煙柱の数値計算等、マグマ溜りから噴火・運搬・堆積に至るまで広くかつ基礎的な発見を行い多数の論文として発表してきている。特筆されるべき業績としては、火道内マグマ混合過程について、閉じた系でのオーバーターンにより低レイノルズ数の条件でもマグマ混合が生じることを示したこと、爆発・非爆発的噴火の分岐条件を定式化したこと、地殻内マグマ溜りの冷却・結晶化に2つのモードがあることを指摘したこと、等があげられる。小屋口氏はそれまでの研究を纏めた形で2008年に東京大学出版会から『火山現象のモデリング』として出版した。この本で小屋口氏は多種多様な物理モデルを網羅的にかつ徹底的にとりあげ、体系的に纏めている。火山学は社会との繋がりでは噴火予知計画や現実の噴火対応といった応用的な側面があるが、火山噴火予測にも理学的な定量的モデルが必要とされると考えられる。噴火現象に関する基礎科学の進歩が個々の噴火について定量的モデルを可能とし、噴火予測等に役立つことが期待される。以上のように火山現象の実証的モデル研究とその物理学的基礎を体系的に整備したことは日本の火山学の基礎研究を進める上で極めて大きな業績と考えられ、日本火山学会賞にふさわしいと判断される。

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