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日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)

第12号 立尾有騎・他

対象論文

立尾有騎・井口正人 (2009) 桜島におけるBL型地震群発活動に伴う地盤変動. 火山, 54 (4), 175-186. doi: 10.18940/kazan.54.4_175.

授賞理由

 この論文は、桜島におけるストロンボリ式に類似する噴火に伴うBL型地震(低周波火山性地震)群発活動と地盤変動(変動量、継続時間)の関係を初めて明瞭に示した。著者らは水管傾斜計と伸縮計のデータについて潮汐補正を向上させることにより純粋に火山現象による山体膨張・収縮過程を取り出すことに成功している。BL型地震群発に先行して3‐30時間にわたる山体膨張・伸張が検出され、またBL型地震群発活動に伴って1‐7時間に及ぶ山体収縮が生じていることが示された同火山のブルカノ式噴火のケースではこの山体膨張・伸張過程はより短時間に大きな変位速度で生じているが、総変位量は両者でほぼ同程度であった。ブルカノ式噴火の直前には火口での火山ガス放出が停止するのに対して、BL型地震群発前には穏やかな火山ガス放出が目視されている。これらのことから、BL型地震群発とブルカノ式噴火の違いは、直前の火道上部の閉塞状況によっており、ブルカノ式噴火では火道上部がほぼ完全に閉塞されるのに対して、BL型地震群発前の火道上部の閉塞状況は不完全であることが示唆される。この論文はマグマ上昇過程における脱ガス状況の違いの重要さを示したもので、桜島火山の噴火予測に資するのにならず、一般に火山噴火様式を支配するメカニズムの理解に寄与するものである。よって、本論文は平成22年度日本火山学会論文賞にふさわしいと判断される。

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