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日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)

第25号 道家涼介・原田昌武・萬年一剛・板寺一洋・竹中潤

対象論文

Ryosuke Doke, Masatake Harada, Kazutaka Mannen, Kazuhiro Itadera and Jun Takenaka (2018) InSAR analysis for detecting the route of hydrothermal fluid to the surface during the 2015 phreatic eruption of Hakone Volcano, Japan, Earth Planet Space, 70, 63, doi:10.1186/s40623-018-0834-4.

授賞理由

 箱根火山では、2015年6月29日~7月1日かけて、大涌谷で水蒸気噴火が発生した。著者らは、ALOS2のPALSAR-2センサーのデータやIn-SAR解析を行い、大涌谷の小噴火地点で、噴火前に局所的に衛星に近づく変位があり、大涌谷から南東方向に向かって、衛星に近づく場所と衛星から遠ざかる場所が直線状に分布し、変化する様子を捉えた。その後、膨張源についてのインバージョン計算を行い、大涌谷直下の極めて浅いところの熱水だまりの局所的膨張、その南東の直線状の地表面変位は、開口割れ目状に熱水が貫入したものと推定した。また、大涌谷の近くにある強羅地域の地質や温泉の研究から、地下にあった熱水が海抜約530~830 m付近の割れ目に移動し、さらに大涌谷の直下の熱水だまりを膨張させ、水蒸気噴火に至ったとモデルを構築し、今回、熱水の通路として推定された割れ目の位置は、既存の亀裂(過去の噴火時に形成された噴火口の列)と一致することを明らかにした。
 本論文は、In-SARによる変形の詳細な観測結果から地下構造モデルを推定し、既往の地質構造や地表に見られる小火口列の方向も合わせた詳細な考察を加え、地球物理的な観測成果と、地下地質や微地形に残る火山活動の痕跡を合わせて考察している点が優れている。また、今後、In-SARによる連続的な変形の観測が、局地的な水蒸気噴火の前兆をとらえられる可能性を示した。
 以上の理由から、本論文を、日本火山学会論文賞とする。

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