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日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)

第25号 風早竜之介

研究課題

「火山ガス観測研究に基づく火山噴火機構の解明」

選考理由

 マグマ中のガスの分離放出過程は噴火ダイナミクスを理解する上で重要であるが、地表で観測される火山ガスの観測のみでは、地下で起きている現象を推定することは困難である。
 風早竜之介氏は、火山ガス放出率の観測手法改良を進め、地球物理データとの比較可能なデータを取得した上で、火山ガス放出率の変動等を地震モーメントや地殻変動量と比較することにより、マグマ供給系や噴火発生過程の理解を進め、火山学に大きな貢献をしてきた。その功績は、火山ガスSO2放出率データ解析手法の高度化、長周期地震を伴う火山ガス突出現象の解明、浅間山における地殻変動と火山ガス放出量の比較に基づくマグマ溜り火道系におけるマグマ収支の定量化に分けられる。
 データ解析手法の高度化としては、遠隔測定データを基に火山噴煙中のSO2濃度分布のトモグラフィ解析手法を開発し、火山噴煙の動態を明らかにした。また、桜島南岳火口と昭和火口のSO2放出率を分離定量し、噴火活動に関連する昭和火口の活動の定量評価を可能とした。浅間山では、長周期地震を伴う火山ガスの突出をSO2放出率の変化として定量化することにより、地震モーメントと放出量の比例関係を明らかにし、長周期地震が火山ガスの流動により生じていることを明らかにした。火山ガス放出には長周期地震の発生を伴う過程と伴わない過程があり、その相対比が活動時期により変化していることを明らかにし、その変化が火山ガスの供給過程の変化を反映している可能性を示した。また、火山ガス放出量に基づき、脱ガスによる地下のマグマ収縮量や火口浅部へのマグマ供給量を推定し、地殻変動量及びその時間変化と比較解析することにより、浅間山におけるマグマ収支や移動量を定量化し、マグマ供給系のモデル化を進めた。
 風早氏は日本の火山ガスの代表的研究者の一人としても認知され、火山学会60周年記念号においては火山ガス研究の総説を執筆している。他分野研究者との積極的な議論でも際立っており、日本の火山学の将来の担う研究者として、特に融合的研究の推進役として期待される。
 以上から、風早竜之介氏を日本火山学会研究奨励賞に相応しいと判断する。

主要な研究業績

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