日本火山学会賞 (Volcanological Society of Japan Award)
第08号 中田節也
受賞対象
「火山噴火現象理解のための物質科学的研究」
授賞理由
中田節也氏は、数多くの噴火現象に関する学術的成果を残すとともに、火山学会発展にも大きな貢献を果たしている。
1990年に始まった雲仙普賢岳の噴火では、いち早く噴出率変化に着目し、地球物理データとの関係を明らかにするなど、地球物理観測の高度化草創期に、現象の本質をいち早く見抜き、精力的に噴火メカニズム解明に取り組んだ。こうした研究スタイルは今日の世界的な火山噴火の物質科学的研究の模範ともなっている。その後も独創的な挑戦を続けられ、1999年からの雲仙科学掘削計画─国際陸上科学掘削(USDP-ICDP)では、噴火間もない火道掘削に挑む世界初の大型プロジェクトを牽引し、国内外で噴火および火山体構造の研究活性化に尽力された。
その後も国内外の火山を問わず、噴火推移および物質科学的解析を迅速に行い、地球物理データに照らして噴火現象の総合的理解に取り組まれた。これまで扱ってきた噴火は、雲仙普賢岳1991-1995年噴火、九重火山1995年噴火、三宅島2000年噴火、有珠山2000年噴火、浅間山2004、2008 年噴火、北マリアナ諸島アナタハン火山2003、2005、2007-2008年噴火、新燃岳2011年噴火、インドネシア・シナブン山2010-2015年噴火、同・ケルート山2014年噴火、西之島2014年噴火、御嶽山2014年噴火と実に多い。これらの多くの噴火では、観測班の設置や観測経費の獲得に尽力し観測体制を整え、系統的かつ継続的な観測研究を可能にし、噴火の詳細な推移の解明に大きく寄与した。最近では、過去の噴火履歴と現代の噴火観測データに基づく噴火系統樹作成に着手し、噴火推移予測など火山防災にも大きく寄与している。また、国際誌の編集委員を長く務めると共に、国内火山研究の特集号企画などを率先して進め、国内火山学の国際化に大きく尽力されてきた。
また、長年にわたり、日本火山学会理事、IAVCEI の執行委員を務め、火山学会会長、IAVCEI会長、噴火予知連絡会の副会長などを歴任された。特に火山学会法人化では、定款の取りまとめ、学会事務局の移転など、今日の学会の基盤整備に尽力された。2007年 Cities on Volcanoes 5(島原市で開催)、2012年第5回世界ジオパークユネスコ会議(同)、2013年IAVCEI学術大会(鹿児島市で開催)など、国際会議の国内開催にも貢献されてきた。
九州大学および東京大学では長く後進の指導にあたり、現在の日本火山学会を担う多数の人材を育成した。さらに、雲仙火山博物館の監修、日本ジオパーク委員会副委員長を務めるなど、火山学そのものの発展のみならず、その成果に基づき、火山や噴火を正しく理解し、向き合うための考え方を広めることにも貢献されてきた。
以上から、中田節也氏を日本火山学会賞に相応しいと判断する。