日本火山学会賞 (Volcanological Society of Japan Award)
第09号 寅丸敦志
受賞対象
「マグマの発泡・結晶化の理論的研究に基づく火山噴火現象の解明」
授賞理由
寅丸氏は、マグマの上昇減圧により生ずる気泡や結晶の核形成・成長過程の理論モデルを構築するとともに、そのモデルを用いて噴出物の解析を行うことで噴火現象の定量的な理解を進め、火山学の進展に大きく貢献してきた。
寅丸氏は、上記の理論モデルを噴出物中の気泡数密度の解析に適用することにより減圧速度計としての利用を提案し、幾つかの爆発的噴火においては非常に大きな減圧速度が必要であることを明らかにした (Toramaru, 1989; 1995; 2006)。また、既存気泡を含む過飽和なマグマの減圧による二次核形成の条件を理論的に解明し、噴火のトリガーとなるマグマの過剰圧の原因となるマグマの過飽和度の推定の可能性を提示した (Toramaru, 2014)。さらに、マグマの減圧・脱水に伴うマイクロライトの形成のモデル化により、噴出物中のマイクロライト数密度を利用した脱水・減圧速度計を開発し、雲仙平成新山噴火や伊豆大島1986年噴火におけるマグマの減圧速度を推定し、噴火様式の違いが地下でのマイクロライト形成時のマグマ減圧速度の違いを反映していることを明らかにした(Toramaru et al., 2008)。
寅丸氏は、卓抜した発想力と幅広い知識に基づき独創的な研究成果を上げ、その独自の視点と研究に対する真摯な姿勢は、長年にわたり国内外の多くの研究者に刺激を与えてきた。この火山学の発展に対する多大なる貢献を踏まえ、寅丸氏を日本火山学会賞の受賞者とする。