日本火山学会賞 (Volcanological Society of Japan Award)
第10号 井口正人
受賞対象
「多項目観測による火山活動評価と比較研究に基づく噴火過程の解明」
授賞理由
井口氏は、国内外の研究者と共同して、活火山における地球物理学的研究を推進するとともに、物質科学的研究成果も取り入れた火山活動評価を実践し、長期間にわたる多項目観測の有効性を実証した。
桜島では、共同研究者とともに、地震・測地データを詳細に解析し、噴火に伴う地震の発生過程(Tameguri, Iguchi et al. 2002)や地震・山体変形と噴火現象の関連性(立尾・井口、2009)、地下マグマ供給系(Hidiyati et al. 2007)を明らかにした。また、近代観測以降の桜島の火山活動をまとめ(Iguchi et al., 2015)、マグマ供給率をもとに噴火の規模や様式を整理した、斬新な噴火事象系統樹を提案した(井口・他、2019)。これらの成果は桜島の噴火機構の解明に大きく貢献した。
海外ではインドネシア国の行政機関と長年協力し、メラピ山やシナブン山等の火山観測網の整備や火山監視・防災に貢献した。
井口氏は、IAVCEI2013の企画・運営、アジア火山学コンソーシアムの構築や日本火山学会とイタリア火山学会の連携協定の締結を主導するなど、卓抜した指導力と調整力、幅広い知識に基づき、観測火山学を進展させるとともに、新たな研究分野を開拓し、火山学の新たな道筋を示した。これらの火山学の発展に対する多大なる貢献を踏まえ、井口氏を日本火山学会賞の受賞者とする。