日本火山学会賞 (Volcanological Society of Japan Award)
第14号 大場 武
受賞対象
「火山における地球化学的観測研究‐熱水系の理解、火山活動評価、国際貢献および人材育成‐」
授賞理由
大場氏は多くの火山で長期的な火山ガス観測及びガス試料の分析に取り組み、特に熱水系が発達した火山の活動活発化の理解や火山活動評価の水準向上に貢献してきた。大場氏が長年の火山ガス観測を元に導き出したシーリング層破綻モデルを使用した熱水系卓越火山の活動活発化の考え方は、草津白根火山や箱根火山における活動活発化の解釈の基礎となっているほか、熱水系が発達した火山の共通イメージになりつつある。長年にわたり取り組んできた精力的な観測に基づいて、活動活発化がガス組成変化としていち早く検出できる可能性を示したことは、困難とされる水蒸気噴火の予測に希望を与える成果といえよう。大場氏は国際的な活動も精力的に行い、IAVCEI火口湖コミッション公式ワークショップの主催や、IAVCEI推薦による草津白根火山書籍の編著等を通して、我が国の火山学の国際化推進に貢献してきた。また、コスタリカやカメルーン等では学術的研究のみならず防災と人材育成にも尽力し、特にカメルーンでの成果に対しては同国政府から勲章を授与されている。このように、火山ガスをキーワードとした大場氏の多岐にわたる活動は、学術的貢献のみならず、国内外の火山活動評価や人材育成まで幅広い成果を上げてきた。
以上の理由から、日本の火山学の発展に対し長年において特段の貢献があった者として、大場氏を2025年度日本火山学会賞にふさわしいと認めた。