日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第13号 田中宏幸・他
対象論文
Hiroyuki K. M. Tanaka, Tomohisa Uchida, Manobu Tanaka, Hiroshi Shinohara & Hideaki Tairai (2010)
Development of a portable assembly-type cosmic-ray muon module for measuring the density structure of a column of magma.
Earth Planet Space,
62 , 119-129.
doi: 10.5047/eps.2009.06.003.
授賞理由
火山体の構造探査は地震学的、電磁気学的手法など様々な手法により行われ、その結果は、火山の形成過程やマグマの上昇・噴火過程等の理解を深めてきた。本論文は、主著者らが近年開発した宇宙線ミュオンを用いた火山浅部の密度構造測定手法を遠隔地での観測に応用するための、新たに開発された移動可能な検出器システムと解析手法を述べるとともに、それを薩摩硫黄島硫黄岳で用いてデータ解析をした結果を報告したものである。消費電力を押さえ機動性を備えた新たな測定装置を用いることにより、薩摩硫黄島硫黄岳の近傍での観測が可能となり、その結果火山体浅部に火道の存在を示す低密度領域が検出された。本論文は、宇宙線ミュオンラジオグラフィーの技術的な発展と火道浅部構造の新たな知見を示したものであり、2011年度日本火山学会論文賞として相応しいと判断される。