日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第16号 津久井雅志
対象論文
津久井雅志 (2011) 浅間火山天明噴火:遠隔地の史料から明らかになった降灰分布と活動推移.
火山,
56 (2-3), 65-87.
doi: 10.18940/kazan.56.2-3_65.
授賞理由
本論文は、膨大な史料を火山学的な視点で検討し、火山災害を生み出した1つの典型例である浅間山の天明噴火について、時間分解能を高めた描像を描くことに成功している。噴火記録 が多く残されている浅間火山の天明噴火の噴火推移を遠隔地の史料収集を行い、降灰、鳴動・震動、臭気も含め、高精度の分解能で解析し、噴火を復元している。広範囲の大量の史料に基づく研究は、これまでに例がなく、火山噴火 の研究に大きく貢献したといえる。現在の火山噴火研究の大きな課題のひとつとして噴火推移予測あるいは噴火系統樹での分岐判断に関する研究がある。このためには詳細な噴火推移の明らかな多くの事例の蓄積が必要であり、本研究のような手法が重要になる。この成果は、防災対策を考える上で現実味のある時間スケールでの思考が可能となった点で意義がある。浅間山におけるプリニー式噴火を想定した火山防災対策を検討する上で、天明噴火の推移がより明確になったことは重要である。