日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第18号 伊藤順一・他
対象論文
伊藤順一・星住英夫・川辺禎久 (2014) 最近5000年間の九重火山における水蒸気噴火の発生履歴.
火山,
59 (4), 241-254.
doi: 10.18940/kazan.59.4_241.
授賞理由
小規模な噴火により火口周辺の比較的狭い範囲しか影響を及ぼさない水蒸気噴火は、噴出物の分布範囲も狭く、過去の噴火履歴が十分に分かっていないことも多い。2014年の御嶽山噴火災害の例でも明らかなように、たとえ小規模とはいえ、火口の近傍に人が立ち入っていれば大きな被害をもたらしうる。本論文は、九重火山の山頂近傍の噴出物調査および多数の14C年代測定を行い、同火山の過去5000 年間の噴火史を明らかにした。その結果、約500年間隔で発生していた水蒸気噴火6層準を確認するとともに、より小規模な噴火に関してはほとんど堆積物が残っていないことなども明らかにした。本研究は、九重火山における防災対策に大きく貢献するだけでなく、水蒸気噴火の噴出物を認定し、噴火時期を特定する上で有効なアプローチを示しており、ほかの火山で発生履歴を調べる上でも大いに参考になる水蒸気噴火履歴研究のスタンダードとなり得るものといえ、火山学的に価値の高いものである。以上により、日本火山学会論文賞として相応しいと判断する。