日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第19号 中尾 茂・他
対象論文
Shigeru Nakao, Yuichi Morita, Hiroshi Yakiwara, Jun Oikawa, Hideki Ueda, Hiroaki Takahashi, Yusaku Ohta, Takeshi Matsushima & Masato Iguchi (2013)
Volume change of the magma reservoir relating to the 2011 Kirishima Shinmoe-dake eruption-Charging, discharging and recharging process inferred from GPS measurements recharging process inferred from GPS measurements.
Earth Planet Space,
65 (3), 505-515.
doi: 10.5047/eps.2013.05.017.
授賞理由
GPSなどを用いた地殻変動観測により、火山直下のマグマ溜りへの深部からのマグマの供給と、さらに地表への上昇と噴火にともなう移動現象を正しく把握することは、火山噴火予知研究において極めて重要である。本論文は、2011年の霧島火山新燃岳噴火における地殻変動を、GPS データを用いて解析し、噴火に伴うマグマ溜りの体積変化を明らかにすると共に、マグマ供給の時間変化及びマグマ溜りの位置を明らかにしたものである。地殻変動解析において、広域地殻変動および桜島火山の影響を取り除き、新燃岳マグマの影響のみを抽出し、その結果、マグマは噴火前の1年間で蓄積し、噴火最盛期の6日間で約65% が噴出したこと、その後10ヶ月間マグマの供給が続いたこと、その間マグマ溜りの位置は、山頂の北西 5 km の地下約 8 km の位置で不変であったことを明らかにした。本研究は、稠密な観測網によるデータを、広域地殻変動や桜島火山の影響を考慮に入れる等慎重に解析した研究であり、極めて優れた研究となっている。以上により、日本火山学会論文賞として相応しいと判断する。