日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第21号 加藤愛太郎・他
対象論文
Aitaro Kato, Toshiko Terakawa, Yoshiko Yamanaka, Yuta Maeda, Shinichiro Horikawa, Kenjiro Matsuhiro & Takashi Okuda (2015) Preparatory and precursory processes leading up to the 2014 phreatic eruption of Mount Ontake, Japan.
Earth Planets and Space,
67, 111,
doi: 10.1186/s40623-015-0288-x.
授賞理由
御嶽山2014年噴火は、ごく小規模な噴火でありながら、噴火口近傍に多数の観光客がいたため、死者・行方不明者計63名と雲仙火山1991年噴火を上回る犠牲者が出るなど、日本の火山学にとって極めて重要な噴火であった。同噴火に伴い発生した様々な火山現象を詳細に解析することは、将来において同様な噴火災害を防ぐ上で大変重要である。本研究は、同噴火前後に発生した地震活動を詳細に解析し、噴火の20日前から火山構造性地震が、15日前から低周波地震が山頂から 1-1.5 km の深度で増え始め、噴火10分前から震源域が北北西-南南東方向に広がりながら急激に上昇し噴火に至ったことを明らかにし、これらがマグマ由来の高圧水蒸気およびガスの上昇によるものであることを明らかにした。地震活動の精密解析により噴火の準備過程から噴火直前までの地下プロセスを明らかにした極めて優れた研究となっており、将来の小規模水蒸気噴火の予知及び噴火災害防止に向けて、その意義は大きい。
以上から、本論文は日本火山学会論文賞に相応しいと判断する。