日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第23号 前野 深・他
対象論文
Fukashi Maeno, Setsuya Nakada, Teruki Oikawa, Mitsuhiro Yoshimoto, Jiro Komori, Yoshihiro Ishizuka, Yoshihiro Takeshita, Taketo Shimano, Takayuki Kaneko & Masashi Nagai (2016)
Reconstruction of a phreatic eruption on 27 September 2014 at Ontake volcano, central Japan, based on proximal pyroclastic density current and fallout deposits.
Earth Planets and Space,
68, 82,
doi: 10.1186/s40623-016-0449-6.
授賞理由
本論文では、社会的に注目を浴びた御嶽山2014年噴火に関して、火口近傍堆積物の火山地質学的解析に、実際の噴火映像・画像も加味して、噴火過程を明らかにした。まず堆積物を3つに区分し、それらが下位から比較的乾いたPyroclastic density current(PDC)堆積物、最大規模の湿った降下堆積物、そして最上位の降下火山灰からなることを明らかにした。このことからまず乾いた条件下で火道形成に伴うPDCが発生し、その初速は24-28m/sであると推定した。そしてその後に火道が発達し、湿った噴煙柱が形成され噴火最盛期を迎え、その後に噴火活動が衰退したという推移を明らかにした。この初期の火道形成および最盛期の火道発達時期を通じて、弾道放出物が発生していたことも示した。今回のような小規模な水蒸気噴火については、これまでは研究者の注目を浴びることは少なかったが、防災面を考えると、発生機構や噴火推移について明らかにする必要がある。本論文では火山地質学的手法と噴火映像・画像解析を結びつけて、小規模で複雑な噴火推移を復元することに成功した。この成果は水蒸気噴火の研究において重要であるだけでなく、火山防災面でも重要であり、他の火山における同様の噴火研究での発展が期待できる。
以上の理由から、本論文を日本火山学会論文賞とする。