日本火山学会論文賞 (Best Paper Award)
第35号 宮町宏樹 外69名
対象論文
Miyamachi, H., Yakiwara, H., Kobayashi, R. et al.(2023) Solidified magma reservoir derived from active source seismic experiments in the Aira caldera, southern Kyushu, Japan
Earth Planets Space,
75, 166,
doi:10.1186/s40623-023-01919-z.
授賞理由
本論文は人工震源を用いた地震波探査により、姶良カルデラの現在の地震波速度構造を詳細に解析したもので、低頻度高リスク噴火を起こすカルデラ火山の地下構造を明らかにした重要な研究である。得られた地震波速度構造からカルデラの構造、固結および溶融マグマ溜まりの分布や推定体積を定量的に論じている点は優れている。また、固結したマグマ溜まりが、過去の噴火におけるマグマ上昇流路に影響したり、観測で得られる膨脹圧力源に近接したりしているようにみえるという指摘は、特に新規性があり興味深い。本論文では鹿児島地溝の詳細な反射法地震探査断面も得られ、この地域が基盤の四万十層群とその上位の地溝埋積堆積物により構成されるとの予察的な報告がされている。今後、本成果と地質研究とをあわせた詳細な分析検討により、カルデラ形成過程を考察するためのさらなる成果が期待される。
以上により、本論文は火山学に関する特に優れた貢献であると判断され、2024年度日本火山学会論文賞に相応しいと認めた。