日本火山学会学生優秀論文賞 (Best Student Paper Award)
第04号 田口貴美子
対象論文
Taguchi, K., Kumagai, H., Maeda, Y. & Torres, R. (2018)
Source properties and triggering processes of long-period events beneath volcanoes inferred from an analytical formula for crack resonance frequencies.
J. Geophys. Res.: Solid Earth,
123, 7550-7565,
doi: 10.1029/2018JB015866.
授賞理由
噴火の前兆的な現象の1つに低周波地震(LPイベント)がある。LPイベントは割れ目が振動することで発生すると考えられ、波形の特徴(減衰率と振動周波数)は、振動体のサイズやその中に含まれる流体特性によって変化する。本研究では、最近提案されたクラック振動の周波数に関する解析式により、LPイベントの波形の特徴から震源にあるクラックのサイズと流体特性を推定する手法を開発した。さらにこの手法で草津白根山とガレラス山で発生したLPイベントの解析を行った。その結果、クラック内の流体として草津白根山は小さな水滴を含む水蒸気(ミスト)、ガレラス山は火山灰(ダスト)を含むガスであることが推定された。さらに両火山でクラックのサイズと流体特性が大きく時間変化していたことも分かった。数値計算に基づく従来の研究では困難であったクラック形状と流体特性を同時に推定できる本手法により、流体の状態や励起過程に関する定量的な議論が可能となった。本手法は、LPイベントの震源での流体の状態把握などの研究に活用でき、それらを通して噴火の予測にも貢献するものである。この研究は、田口さんの卒業および修士研究として行われたものであり、プログラム開発、データ解析、結果の解釈、論文執筆まで田口さんによって主導的に行われた。このような先駆的研究を卒業および修士研究で行ったことは特筆に値する。
以上より、上記論文を日本火山学会学生優秀論文賞にふさわしいと判断される。