日本火山学会学生優秀論文賞 (Best Student Paper Award)
第15号 宮木裕崇
対象論文
Miyagi, Y., Tsunogai, U., Watanabe, K., Ito M., Nakagawa, F., Kazahaya, R. (2024)
Estimating emission flux of H
2S from fumarolic fields using vertical sensor array system.
J. Volcanol. Geotherm. Res.,
450, 108090,
doi:10.1016/j.jvolgeores.2024.108090
授賞理由
火山活動の評価において、火山ガス放出量の定量的な把握は非常に重要であるが、従来の観測手法は二酸化硫黄の放出量測定を主としてきた。日本には熱水系が卓越する火山が多く存在するにもかかわらず、それらの火山では二酸化硫黄が放出されていないため、火山ガス放出量の定量的な評価が困難であった。本論文では、熱水系が卓越する火山の火山ガスに主要成分として含まれる硫化水素に着目して、複数の小型硫化水素センサーを用いて噴煙中の硫化水素濃度鉛直分布を測定するシステムを開発し、実際に複数の火山・地熱地帯で測定を行っている。特に、硫化水素だけでなく二酸化硫黄も放出する霧島硫黄山での観測では、従来法による二酸化硫黄の放出量と比較して測定結果が整合的であることも示した。本論文で確立された手法は、火山ガスを用いた火山活動評価の進展に大きく貢献するものであり、今後実用性や応用性がさらに広がることが期待される。
以上の理由から、火山学に関する独創的で優れた論文を投稿時点において学生として筆頭執筆した宮木氏の本論文を2025 年度日本火山学会学生優秀論文賞にふさわしいと認めた。