日本火山学会優秀学術賞 (Distinguished Academic Award)
第01号 下司信夫
受賞対象
「マグマ上昇・貫入・噴火過程とカルデラ形成過程の地質学的研究」
授賞理由
下司信夫氏は、主に地質調査および噴出物の組織や岩石学的解析に基づき、研究課題において優れた成果をあげている。まずカルデラ形成過程に関する研究では、マグマ溜りでの減圧量がカルデラ形成の発現要因であることをモデル化した。さらに姶良カルデラ噴火大隅降下軽石の噴出物の解析に基づき、カルデラ形成に至る過程をモデル化した。岩脈貫入・マグマ上昇の規制要因に関する研究では、岩脈の形状や分布、噴火の推移過程などを解析することにより、マグマ上昇の規制要因を明らかにしてきた。特に最近の成果では、三宅島における噴火割れ目の分布が、浅部マグマ溜りの形状に依存することを明らかにした。これらの成果は、重要な基礎研究であるととともに、近年注目をあびている巨大噴火発生機構や、防災を目的とした噴火発生場所の評価を行う上でも基礎となる成果である。これらに加え、火山噴火活動の緊急調査や噴出物解析に基づく噴火過程の解析に関する研究などを実施し、最近5年間に合計で筆頭8報、共著10報の論文を国際誌に講評している。また、被推薦者はIAVCEIのComission of Collapsed Caldera の Leader を2012-2016年の4年間務め、2016年日本開催のワークショップを実現するなど、国際的な火山学の学術発展にも貢献している。
以上の理由から、下司信夫氏を日本火山学会優秀学術賞の受賞者とする。
主要な研究業績
- Geshi, N. and Oikawa, T. (2016) Orientation of the eruption fissures controlled by a shallow magma chamber in Miyakejima. Frontiers in Earth Science, 4, 99. doi:10.3389/feart.2016.00099.
- Geshi, N. and Miyabuchi, Y. (2016) Conduit enlargement during the precursory Plinian eruption of Aira Caldera, Japan. Bulletin of Volcanology, 78(9), 63. doi: 10.1007/s00445-016-1057-9.
- Geshi, N., Rutch, J., Acocella, V. (2014) Evaluating volume for magma chambers and magma withdrawn for caldera collapse, Earth and Planetary Science Letters 396 107-115. doi: 10.1016/j.epsl.2014.03.059.