日本火山学会優秀学術賞 (Distinguished Academic Award)
第03号 市原美恵
受賞対象
「噴火観測とアナログ実験による火山噴火ダイナミクスの総合的研究」
授賞理由
市原氏は、火山噴火を駆動するマグマの上昇・破砕などの動的現象を噴火に伴う地震・空振などの振動現象を通して理解する研究を推進してきた。その研究手法は、物理学の理論、微動や空振の観測、さらに理論や観測では見ることのできない複雑系の挙動を理解するためのアナログ実験など多岐にわたる。中でも確立した理論・解析手法を応用するだけでなく、独自に理論的枠組みや解析手法の開発を進めてきた。同じ場所に設置された空振と地震データとの相互相関解析を行い、空振シグナルを効率良く抽出できる可能性を検討し、その手法を確立した。確立された手法は空振シグナルの検出レベルを飛躍的に向上するもので、気象庁の火山監視にも役立っている(Ichihara et al.,2012)。
マグマ物性研究においても、市原氏は大きな貢献を果たした。市原氏は、理論的考察からマグマの脆性度を定量化するパラメータを独自に提案した。更にマグマ破砕の理解を深めるため、アナログ物質を用いた実験的研究も進めている。近年では、アナログ実験や空振・微動観測に関する学生との共同研究を通し、総合的な視点を持つ次世代の火山研究者の育成にも貢献している。
以上のような独創的で多面的なアプローチを用いた総合研究が火山噴火現象の理解、さらには火山学術全体の発展に与える影響は非常に大きい。よって、市原氏を日本火山学会優秀学術賞の受賞者とする。