日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第04号 市原美恵
研究課題
「気泡を含む粘弾性流体の力学とマグマのダイナミクスへの応用」
選考理由
市原美恵さんは、気泡を含むマグマ中での波動や圧縮性流体としての振る舞いについて実験的・理論的研究を進めている。マグマのような高粘性の粘弾性物質中の気泡の振る舞いを実験・理論の両面から明らかにするとともに、そこで得られた知見をマグマ・気泡系の音波の伝播の問題に発展させ、火山性微動や地震波の伝播の問題を解いた。また、模擬粘弾性物質を用いたユニークな実験的研究を行い、火山爆発の性質を決定するマグマの破砕現象に制約条件を与えた。これらの研究業績は、火山学的に意義をもつばかりではなく混相流体力学の上でも重要な新知見を含む。彼女の研究成果は火山学者のみならず幅広い分野の研究者に影響を与え、工学のグループと火山物理学グループの研究の輪が広がり、自身がその学際的研究グループの中核的な存在となっている。 さらには、爆発に関する野外実験や新しい観測手法の開発にも積極的に取り組んでいる。このように、市原さんは「実験火山学」という新たな学問分野の潮流を作り、今後の火山学に大きく貢献するものと期待され、日本火山学会研究奨励賞を授与するに値すると判断される。
主要な研究業績
- Ichihara, M. and Kameda, M. (2004) Propagation of acoustic waves in a visco-elastic two-phase system: influences of the liquid viscosity and the internal diffusion, J. Volcanol. Geotherm. Res., 137, 73-91. doi: 10.1016/j.jvolgeores.2004.05.001.
- Ichihara, M., Ohkunitani, H., Ida, Y., and Kameda, M. (2004) Dynamics of bubble oscillation and wave propagation in viscoelastic liquids. J. Volcanol. Geotherm. Res., 129, 37-60. doi: 10.1016/S0377-0273(03)00231-2.
- Ichihara, M., Rittel, D., and Sturtevant, B. (2002) Fragmentation of a porous viscoelastic material: Implications to magma fragmentation. J. Geophys. Res., 107(B10), 2229. doi: 10.1029/2001JB000591.