日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第05号 栗谷 豪
研究課題
「地殻におけるマグマの熱・物質進化過程の定量的解明」
選考理由
栗谷 豪さんは、マグマ溜まりでの熱進化・物質分化過程の解明というテーマに対して、古典的な観察手法熱力学モデルを組み合わせながら従来とは異なりかつ明確な描像を明らかにしつつある。主に、利尻火山を題材とし、溶岩の多様性の多くがマグマ溜まり周辺の境界層やマグマ溜まりからの上昇・噴出過程中において生み出される可能性を示した。また、マグマ溜まりとその周辺を包括した熱的進化・物質輸送を数値モデル化し、利尻火山に限らないより一般的な議論を展開した。さらには、鉛同位体比分析法の開発や軽元素濃度の高精度測定を行い、マグマヘの物質混入過程および溶岩の脱ガスに伴う元素分別を議論した。このように、栗谷さんは異なる手法を有機的に組み合わせることによってマグマ進化を議論し多くの業績を残した。今後もマグマの進化や上昇・噴火過程の理解に新たな展開をもたらすと期待され、日木の火山学の発展に寄与すると考えられる。以上のことより、栗谷さんの業績は日本火山学会研究奨励賞を受賞するに値すると判断される。
主要な研究業績
- Kuritani, T., Kitagawa, H., and Nakamura, E. (2005) Assimilation and fractional crystallization controlled by transport process of crustal melt: implications from an alkali basalt–dacite suite from Rishiri Volcano, Japan, J. Petrol., 46(7), 1421–1442. doi: 10.1093/petrology/egi021.
- Kuritani and Nakamura, E. (2003) Highly precise and accurate isotopic analysis of small amounts of Pb using 205Pb–204Pb and 207Pb-204Pb, two double spikes. J. Anal. At. Spectrom., 18, 1464-1470. doi: 10.1039/B310294G.
- Kuritani, T. (1999) Boundary layer fractionation constrained by differential information from the Kutsugata lava flow, Rishiri volcano, Japan. J. Geophys. Res., 104(B12), 29401-29417. doi: 10.1029/1999JB900266.