日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第07号 竹内晋吾
研究課題
「火山噴火機構の物質科学的研究」
選考理由
竹内晋吾さんは、火山学における重要な研究課題の一つである噴火機構について、主に物質科学的研究から注目すぺき成果を上げている。Rubinの岩脈伝播モデルと、経験的な母岩の引張強度とを結合することで、マグマがマグマ溜りから噴出できる粘性限界が決定されることを着想し、北海道駒ケ岳および他のいくつかの火山で自らの仮説を立証した。また同時に、マッシュ状マグマ溜りからの噴火開始条件に対する高温マグマの役割についても定量的に明らかにした。更に、透気率測定装置を自ら開発し、単純な減圧発泡で作成された人工的な軽石が、天然の軽石に比べて遥かに低い浸透率を持つことを見出し、天然での脱ガス過程における流動変形の重要性を指摘した。噴火活動史·火山地質から力学まで、総合的・多角的側面から物質科学的研究を行っており、今後火山噴火機構の研究が進展されるものと考えられるので研究奨励賞にふさわしいと判断した。
主要な研究業績
- Takeuchi, S. and Nakamura, M. (2001) Role of precursory less-viscous mixed magma in the eruption of phenocryst-rich magma: evidence from the Hokkaido-Komagatake 1929 eruption. Bull. Volcanol., 63, 365-376. doi: 10.1007/s004450100151.
- Takeuchi, S. (2004) Precursory dike propagation control of viscous magma eruptions. Geology, 32(11), 1001-1004. doi: 10.1130/G20792.1.
- Takeuchi, S., Nakashima, S., Tomiya, A., and Shinohara, H. (2005) Experimental constraints on the low gas permeability of vesicular magma during decompression. Geophys. Res. Lett., 32(10), L10312. 10.1029/2005GL022491.