日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第09号 奥村 聡
研究課題
「マグマの脱水・発泡に関する実験火山学的研究」
選考理由
火成岩の成因論や火山学の物質学的側面において、マグマ中の水の溶解度や溶解メカニズム、拡散係数を決定することは非常に重要であるが、奥村聡さんは、赤外分光法を用いたケイ酸塩ガラスおよびメルトの含水量測定法を発展させ、 さらにそれを用いて水の溶解メカニズムや水の拡散に注目した研究を行ってきており、実験方法とモデル化に関する重要な成果を得ている。また、アナログ物質ではなく、発泡流紋岩質メルトの高温下での剪断変形実験を行うことによって、剪断変形が卓越する壁岩付近では、火道の深部から浸透流脱ガスが始まる可能性を示すなど、世界でも類例を見ない実験をおこなっており、 ダイナミックな火山噴火現象を物質科学的側面から理解する研究手法として今後おおいに発展が期待される。
主要な研究業績
- Okumura, S. Nakamura, M., and Tsuchiyama, A. (2006) Shear-induced bubble coalescence in rhyolitic melts with low vesicularity. Geophys. Res. Lett., 33(20), L20316. doi: 10.1029/2006GL027347.
- Okumura and S. Nakamura (2006) Water diffusion in basaltic to dacitic glasses. Chem. Geol., 227, 70-82. doi: 10.1016/j.chemgeo.2005.09.009.