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日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)

第16号 山本 希

研究課題

「火山における地震波動現象の定量化に関する理論的研究」

選考理由

 日本の火山地震学は従来、観測的な研究が盛んに行われてきたが、山本希氏は主に数理物理的な手法を武器に、火山における地震波動現象を定量化するための理論的研究において重要な成果をあげてきている。山本氏の大学院時代の仕事は広帯域地震計の観測結果を用いて、阿蘇火山での長周期微動が火口配列方向に伸びた 1 km の長さの傾いた割れ目の等方的な膨張・収縮によることを示し、また有珠火山2000年噴火で長周期火山性微動が 5 km の深さで生じマグマの上昇流動に関連していることを示した。Yamamoto and Kawakatsu (2008) では、流体に満たされたクラックの取り扱いについて、周波数モードの境界積分法を用いた新たな計算手法を提案している。これは従来適用されてきた時間モードの有限差分法と比べると格段と優れた計算効率と計算精度を有しており、さらにクラックの共鳴減衰現象を直接計算可能とする等、今後火山地震学にとって有力な武器となると考えられる。Yamamoto and Sato (2010) では、浅間山で行われた人工地震構造探査の記録を用いて、波動伝搬過程においてP波からS波へのモード変換が顕著に生じることと、多重散乱が生じていることを定量的に示した。エネルギー伝搬について従来の拡散モデルと比べると格段と精密な放射伝搬理論を用いることにより、火山の短波長不均質性を地震波伝搬・散乱の観点から定量化したものであり、トモグラフィー法とは異なるアプローチからの火山体構造の解明に繋がる。以上の点から山本希氏は今後、火山地震学の分野での活躍が期待され、日本火山学会研究奨励賞にふさわしいと判断される。

主要な研究業績


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