日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第19号 石橋秀巳
研究課題
「マグマの粘性と結晶化に関する研究」
選考理由
粘性は、マグマの移動集積・上昇・噴火・溶岩流下等、様々な火山現象を支配しているマグマの基本的な物性であるが、化学組成・温度・組織に大きく依存した複雑な挙動を示す。特に、冷却結晶化に伴う粘性変化は、噴火現象の多様性の一因であるが、実際の火山現象の中で生ずる粘性の変化をモデル化する事は未だ難しい。石橋秀巳氏は、この問題を解決するために、天然の玄武岩を用いた実験室での粘性測定および実験試料の詳細な組織解析を行い、マグマの粘性と温度・組成・組織変化の関係を明らかにするとともに、マグマ組織の変化による粘性の非ニュートン的性質を理論的に明らかにしてきた。特に、結晶形状の非ニュートン的性質の出現への影響の評価や、結晶量とひずみ速度と粘性の関係の定式化、マグマのビンガム流体としての挙動の解析により、自然界におけるマグマの粘性変化の定量的な理解が大きく進歩した。石橋氏の研究は、岩石組織と物性の関係に関する優れた物質科学的基礎研究であるとともに、様々な火山現象のモデル化への貢献が期待される成果であり、2012年度日本火山学会研究奨励賞に相応しいと判断する。
主要な研究業績
- Ishibashi, H. and Sato, H. (2010) Bingham fluid behavior of plagioclase-bearing basaltic magma: Re-analyses of laboratory viscosity measurements of the Fuji 1707 basalt. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 105, 334-339. doi: 10.2465/jmps.100611.
- Ishibashi, H. (2009) Non-Newtonian behavior of plagioclase-bearing basaltic magma: Subliquidus viscosity measurement of the 1707 basalt of Fuji volcano, Japan. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 181, 78-88. doi: 10.1016/j.jvolgeores.2009.01.004.
- Ishibashi, H. and Sato, H. (2007) Viscosity measurements of subliquidus magmas: Alkali olivine basalt from the Higashi Matsuura district, Southwest Japan. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 160, 223-238. doi: 10.1016/j.jvolgeores.2006.10.001.