日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第20号 小園誠史
研究課題
「火道流モデルの構築による噴火機構に関する研究」
選考理由
火山噴火において、その様式が爆発的になるか、非爆発的噴火になるかを予測することは、噴火推移予測の観点から最重要課題であり、火山学上最重要テーマの一つである。氏はこの重要課題について理論的研究を行い、一連の論文を含む著しい成果を挙げた。
はじめに、気液二相流の運動方程式、マグマの発泡、マグマ中の結晶の割合とその成長率に関する方程式を組み合わせ、脱ガスを伴う火道流モデルを構築した。火道流の巨視的なダイナミクスは、マグマ溜まりの圧力(Pch)とマグマ噴出率(q)の関係によって特徴づけられる。そのなかで特に、Pch-q の関係がS 字特性曲線を持つ場合、負性勾配の領域で定常的な流れが不安定となり、非爆発的噴火から爆発的噴火への急激な遷移が起こる。氏は、このような火道流の遷移に伴う噴火様式の変化を数値的に解析し、Pch-q 曲線の性質と噴火条件やマグマの性質の関係を体系的に分類するとともに、爆発的噴火への遷移条件と観測される現象について解明した。
本研究による知見は、岩石組織、火山ガス・メルト包有物、ミュオン、地殻変動などの観測データからの噴火遷移過程を把握する可能性を提案するものであり、これまで火山学的に理解されていなかった火道流のメカニズムと噴火様式の解明、さらには、火山噴火予知・火山活動の推移予測のための大きな手がかりとなる理論体系を構築したものとして高く評価される。また、氏は自らの理論を実証する新たな野外観測の研究も進めており、新分野への発展も期待される。よって、以上の成果により、日本火山学会研究奨励賞として相応しいと判断する。
主要な研究業績
- Kozono, T. and Koyaguchi, T. (2012) Effects of gas escape and Crystallization on the complexity of conduit flow dynamics during lava dome eruptions. J. Geophys. Res., 117(B8), B08204. doi: 10.1029/2012JB009343.
- Kozono, T. and Koyaguchi, T. (2010) A simple formula for calculating Porosity of magma in volcanic conduits during dome-forming eruptions. Earth, Planets and Space, 62, 483-488. doi: 10.5047/eps.2010.02.005.
- Kozono, T. and Koyaguchi, T. (2009) Effects of relative motion between gas and liquid on 1-dimensional steady flow in silicic volcanic conduits : 1. An analytical method, J. Volcanol. Geotherm. Res., 180(1), 21-36. doi: 10.1016/j.jvolgeores.2008.11.006.
- Kozono, T. and Koyaguchi, T. (2009) Effects of relative motion between gas and liquid on 1-dimensional steady flow in silicic volcanic conduits: 2. Origin of diversity of eruption styles, J. Volcanol. Geotherm. Res., 180(1), 37-49. doi: 10.1016/j.jvolgeores.2008.11.007.
- Kozono, T., Ueda, H., Ozawa, T., Koyaguchi, T., Fujita, E., Tomiya, A. and Suzuki, Y. J. (2013) Magma discharge variations during the 2011 eruptions of Shinmoe-dakevolcano, Japan, revealed by geodetic and satellite observations, Bull. Volcanol., 75, 695. doi: 10.1007/s00445-013-0695-4.