日本火山学会研究奨励賞 (Young Scientist Award)
第35号 志水宏行
受賞対象
「二層重力流モデル構築による火砕流のダイナミクスと堆積物に関する理論的研究」
授賞理由
志水氏は、噴火災害で最も脅威とされる火砕流について、流動から定置までの一連の過程を統一的に包含した物理モデルを構築する理論的研究に取り組んできた。志水氏は、構築した二層重力流モデルを用いて、火砕流堆積物の特徴を決定する物理過程を明確化し、それらの噴火強度や噴火様式への依存性を明らかにした。また、国際的な火砕流研究コミュニティが主導する「火砕流モデルの妥当性確認とベンチマーキング」の枠組みにおいて構築したモデルの妥当性確認を行い、火砕流モデルの予測性能評価における新たな基準を示した。志水氏が構築した火砕流の二層重力流モデルは、国内外における認知度が高いというだけでなく、物理モデルを地質学的な情報である堆積構造と定量的に結びつけたという点で分野を超えた波及効果があり、将来の更なる発展が期待される。志水氏の一連の研究成果は、火砕流の物理的理解を大きく深化させるとともに、火山防災への応用においてハザード評価の予測性能向上に大きく貢献するものである。
以上の理由から、志水氏を2025年度日本火山学会研究奨励賞にふさわしいと認めた。